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 俺もその事実に驚いたが、国王陛下はギダ殿下の告白に驚愕している。


「ギダ王子、それはまことか!?」


「国王陛下の反対は重々承知しております。ですが、タカ王子の申すことも一理あるかと。この王国には王族以外の人間はいません。それに、長きに渡り人族がこの王国を支配してきたことを不満に思っている獣族が、カメナシ一族を投獄したことで不満を爆発させ、いつ暴動を起こすやもしれません。

 獣族の不満を鎮めるためにも、アリシアと婚約することは最もよい手段だと思われます。どうか、アリシアの両親とカメナシ一族を牢から解き放って下さい」


「……本気で獣族の女性と結婚する気なのか。アリシアはメイドであるぞ」


「はい。私は本気です。アリシアは獣族の王の血を引く由緒正しき家系。今は王家に仕えておりますが、本来ならばこの王国の王女となられたお方。アリシアとの間に男児が生まれし時は、地球人の先祖を持つ私達よりも、この王国に相応しい王子となるでしょう」


 ギダ殿下は昔から口が上手く説得力はある。国王陛下は俺の話に耳は傾けないが、ギダ殿下の話は頭ごなしに否定はしない。


 ギダ殿下は、アリシアとの結婚を認めさせるために、俺を利用したに過ぎない。


「タカ王子はエルフ王のナギ王女と婚約すればよいではないか。共に行動している身、愛し合っているのであろう」


「……っ、ギダ殿下!僕は女ではありません!」


 ナギは王女だと言われ、風船のように頬を膨らませ、地団駄を踏む。その表情が地球に残してきた優香と重なり、思わず笑みが漏れる。


「ナギは王女ではないのか!?美しいゆえ、てっきり女性だと思っていた。失言を許してはくれぬか」


「いいえ、たとえギダ殿下でも許しません!僕はに間違えられることが、一番嫌いなんだ」


「それは困ったな。どうすれぱ許してくれるのか?ナギ王子に姉妹はいるのであろう。エルフ王は子沢山だと聞いている」


「そうですよ。子供は十人いますが、男は僕一人で姉が九人います。生まれた時から僕は女の中で育ち女装もさせられた。だからって、王女に間違えなくても」


 ナギは『プンプン』と頬を膨らませた。


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