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 ―ホワイトメイディ王国―


 この王国には様々な種族が住んでいる。

 俺と従弟のセガは人族。俺達の先祖は、地球人だ。


 ナイトの先祖は獣族と地球人のハーフだ。肌もスベスベで人間と外見はさほど変わらないが獣耳と尻尾があり、五感は人族よりも優れている。


 ナギはエルフ。魔力を持つ妖精だが、祖母が地球人のため外見は人族と見間違うほど類似している。中性的な魅力を持ち女性のように愛らしい。


 ホワイトメイディ王国にはもともと獣族とエルフが共存していたが、獣族は争いが絶えなかった。


 五百年前に地球人が異次元ポータルに吸い込まれ、ホワイトメイディ王国に迷い込んだ。その地球人はヤブキと名乗り、この王国を脅かしていた反乱軍の獣族を討ち取り、国王の座についた。


 その戦闘でヤブキに味方したのが、獣族の中でも比較的人間に従順なネコ科の種族だった。


 ヤブキは長きに渡りこの王国に君臨した。この王国に地球人が迷い込むことは後を絶たず、ヤブキは転移した地球人の女性と結婚し子孫を残し、人族はこの王国に定着した。


 俺の父はヤブキの直系にあたり、現在はホワイトメイディ王国の国王であり、俺は第二王子だ。


 地球人を先祖に持つ俺が、地球に興味を持つのは当たり前のこと。ナイトやセガ、ナギとバンドを組んでいた俺は、地球で自分達の力を試したくなった。


 当然、そんなことを四人の両親が認めるはずはない。


 ナイトの父は獣族の王の血を引いているが、今は国王に仕える厳格な執事だ。ナイトは幼少時代俺の遊び相手だったが、その後、俺の執事となった。ナギは魔力を持つエルフ王の第一王子だ。


 俺達は偶然森の中で異次元ポータルを発見し、四人で地球に転移する。追っ手に素性がバレないように、道化師のようにメイクを施し『異世界ファンタジー』として、地球で音楽活動を開始した。


 路上ライブをしている俺達を、観客が動画撮影し、無断でSNSにアップした。それが有名な音楽プロデューサーの目に止まり、運良くメジャーデビューにこぎつけ、爆発的な人気を得た。俺達の保護者代わり兼運転手は、ナギが魔術で作り出した人形だ。


 ――要するに、俺達は地球で目立ち過ぎた。絶大な人気を得たがために、俺達の行方を捜索していた、国家警察に見つかってしまった。


 国家警察から情報を得た国王(父)は、直ぐさまエルフで最大の魔力を持つ魔術師を地球に送り込み、ナギに魔術を掛けた。

 

 それは、『ナギにそっくりな地球人がナギに触れれば魔術が解けるが、そうでなければ、ナギは永遠に眠りから覚めない』というものだった。


 エルフの魔術師はナギにそっくりな地球人なんか、見つかるはずはないとそう思っていたのだろう。そうなれば、否応なしに俺達は王国に帰還しなければナギの魔術を解くことが出来ないからだ。


 ――だが、俺達は諦めなかった。




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