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「彼女から、電話があったのか?」
「彼女からの電話はない。ナイトがメモ用紙を食べちまったらしいからな」
「は?メモ用紙を食った!?アイツ、魔術で山羊にされたのか!?」
「違うよ」
「じゃあ何で食べたんだよ。タカは彼女とこのまま別れてもいいのかよ」
セガの言葉に、心が痛む。
優香の泣き顔を思い出したからだ。
「一度は彼女と別れた。でも、忘れることなんて出来なかった……。別れて、彼女のことが本当に好きだとわかったんだ。国に戻り父に彼女とのことを認めてもらう」
「は?国王に?それは無謀だろ。俺達は囚われ、魔術師に永遠に眠らされちまうぜ。国王に無断で地球に来たことがバレて追われたんだ。俺とタカは逃げ延びた。だけど、逃げ遅れたナギとナイトは魔術を掛けられた。ナイトは今だに俺達の元に戻って来ない」
「ナイトは魔術で小動物に変えられ、彼女に拾われ、今も彼女の家にいる」
「マジかよ。だったら、どうして一緒に連れて帰らないんだ。全員で王国に戻り許しを請えば、ナイトの魔術も解いて貰えるはずだ」
「本人はそれを望んでいないようだ」
「は?一生山羊でいたいと?」
「だから、山羊じゃない。ナイトは猫にされたんだ」
「……猫!?あのナイトが?猫?バンドと同じキャラじゃん。あはは、嘘だろ?獣族のアイツが人間にニャーニャー媚び売ってんの?」
ゲラゲラ笑っているセガの頭を、ナギがポコンと叩く。
「笑いすぎだよ。ナイトは彼女の家族なんだよ。彼女のママもナイトのことを愛してるんだ。僕に逢うために家を出たナイトを、みんな必死で捜していたんだからね。ナイトが戻った時、ママも彼女もワンワン泣いたんだから」
「ワンワンとニャンニャンか。アイツが人間の世界で、ペットとして飼われているなんて、想像もつかねーよ」
「セガ、いい加減にしろ。今はナイトの意志を尊重し、地球に残す。万が一、彼女に危険が及んだとしても、ナイトが彼女を守ってくれるだろう。ホワイトメイディ王国には三人で帰還する」
「それが王子の決定なら、逆らえないな。ナギ、行こうぜ」
ナギはセガの言葉に頷いた。
――俺達は横一列となり、羽田空港の搭乗口に近付き、右手を真っ直ぐ上に伸ばし人差し指を天に向ける。三人の指先が赤く光り、光線が円を描く。
異次元ポータルが開き、俺達の体は瞬時にその穴に吸い込まれた。
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