貴side

101

 ―羽田空港―


「ナギ、お前、優香に逢いに行ったのか?どうしてそんなことをしたんだ」


「それはタカが僕のことを恋人だと偽り、彼女と別れるための口実にしたからだよ。僕は確かに彼女にそっくりだが、女じゃない。れっきとした男だからね。それとも、タカは男の僕に興味があるの?僕を恋人にしたいと思ってたの?」


「……っ、冗談じゃない。俺は男に興味はないよ。でも、どうして彼女の家がわかったんだよ」


「ナイトが病院に来たんだ。彼女の家に案内してくれた」


「ナイトが……。やっぱりアイツか……」


「僕にかけられた魔術は、『僕にそっくりなが僕に触れれば魔術が解けるが、そうでなければ、僕は永遠に眠りから覚めない』と、いうものだった。セガとタカのお陰で僕の魔術は解けたけど、ナイトの魔術はまだ解けてはいない。僕達には、本来の姿に見えているが、人間には小動物にしか見えないようだ」


「そうみたいだな。だがナイトは俺を見ても素知らぬ顔で無視している」


「無視?そうか、ナイトは今回のことでも怒ってるからね。タカが彼女の恋心を利用し、僕の魔術を解いたと思ってるんだ」


「そうだとしても、ナイトがどうしてそんなに怒る必要があるんだよ」


「タカ、まだわからないの?どうやらナイトは、彼女のことを好きになってしまったみたいだよ。魔術で猫にされ、餓死寸前に彼女に助けてもらった恩義が恋に変わったんだろう。

 だから、彼女の家を出て何日も歩いて恵法大学附属病院まで僕に逢いに来てくれたんだ。憔悴している彼女の誤解を解いて欲しいって……」


 ナイトが……

 優香のために……。


「僕にかけられた魔術を解くために、タカは彼女に近付いたんだろう。でも、付き合ってるうちに、彼女のことを本当に好きになってしまった。僕達と彼女は住む世界が違う。好きになることは許されない。だから、僕のことを恋人だと偽り、彼女に嫌われるように仕向けた」


「……わかってるなら、どうしてバラしたんだよ」


「タカが僕のことを『女』だって言ったからだよ。僕が一番嫌がることを言うなんて信じられない」


「そんなことで怒ってるのか」


「重大なことだ。今度、僕を扱いしたら許さないからね」


「二年間も眠らされていたのに、怒る元気があるなら、もう心配いらないな」


 ナギと話をしていると、ジャラジャラとチェーンの音がし、セガが姿を現す。


「なに揉めてんだよ」


「セガ、彼女に俺の新しい携帯電話を教えただろう」







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