99
――翌朝……
目覚めると、私の隣でかめなしさんが一緒に寝ていた。
昨日、一晩中泣いて……
そのまま、泣き疲れて寝てしまったんだ。
『おはよう、優香』
「お、おはよう……」
『昨日の優香は激しくて、俺、まいったな』
「は……はあ?」
『あんなに激しく抱き締められたのは初めてだよ。俺、クセになりそう』
「……?????」
『この姿になって初めて一緒に朝を迎えたし。初めてのベッドインは、
「あ、あのさ……。言葉の使い方、間違えてるよ」
『どこが間違ってんだよ?照れない、照れない。俺達は同じベッドで寝て朝を迎えたんだ。一線は超えてないけど、パパやママはきっと一線を超えたと思っているはず。正式に挨拶した方がいいかな?』
「一線?パパもママもそんなこと思わないよ。だってかめなしさんは猫なんだから。正式に挨拶しても、パパやママには『ニャー』しか聞こえないし」
『はっ……?そうだった。優香、二人だけの秘め事だな。
「ど、どこが逢瀬なの。昨日は泣きすぎて寝てしまっただけ。もう二度とベッドで寝ないでね」
『冷たいな。俺達もう他人じゃないのに』
「……っ、他人だからね。私とかめなしさんは永遠に他人だからね」
『そんなことわかんねーだろ』
かめなしさんは渋々ベッドから飛び下りた。
――矢吹君……
私……昨日……
矢吹君と別れたんだ……。
でも私は『さよなら』なんて、言わなかったよ。
矢吹君とまたいつか、逢えると信じているから。
ベッドから起き上がり鏡を見る。
ひ、ひどい顔だ……。
泣きすぎて、顔がパンパンに腫れてるよ。まるで、ホカホカの肉まんみたいだ。
――玄関のチャイムが鳴り、階下から母の声が響く。
「優香!いつまで寝てるの。美子ちゃんが来てるわよ」
「……美子!?」
どうして美子が……?
時計に視線を向けると、いつもの出勤時間よりも十分早い。
かめなしさんは私よりも先に部屋を出て、階段を駆け下りる。
「おはよう。かめちゃん」
『おはよう美子!社会人になってまた一段と綺麗になったな。好きだよ』
いつものように、かめなしさんは美子に抱き着く。美子はグレーのスーツなのに、かめなしさんを抱き締めている。
あーあ……
せっかくのスーツが毛だらけだ。
顔を隠しながら、美子に「おはよう」と、小さな声で挨拶をする。美子は私の顔を見て声を上げた。
「わぁ、酷い顔!優香……悲惨だね……」
やっぱり……
悲惨だよね……。
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