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「草野君ったらね。運命の再会だって盛り上がっちゃって。恵太に失恋して、沈んでいたら、くだらないギャグで笑わせてくれて。研修所にいる時も、毎日LINEしてくれて……嬉しかった」
失恋した美子の寂しい心に、草野君はすっと入り込んだ。高校生の時からムードメーカーで、バカなことばかりしてみんなを笑わせていたっけ。
でもその反面スポーツ万能で、ヘタレの恵太とは正反対だったな。
美子が草野君みたいなタイプを選ぶとは想定外だったけど、それだけ寂しかったのかな。
「優香、意外だなって、思ってるんでしょう。でも、草野君優しいんだよ」
「そっか、美子よかったね。これで干物コンビも解散だ」
「なに言ってるのよ。先に干物コンビ解散したのは、優香でしょう。ファーストキスだって私より先だったし。優香は矢吹君とどうなってるの?」
美子は恵太と矢吹君のトラブルを知らない。私が矢吹君に『恋人がいる』と、嘘をつかれたことも、凪が私に真実を教えてくれたことも知らない。
原宿で逢ったチャラ男に、矢吹君の新しい携帯電話の番号を教えてもらい、そのメモ用紙をかめなしさんが食べてしまったことも知らない。
「美子……。私、いっぱい話したいことがあるの」
「うん。いっぱい聞くよ。私は優香の親友だから」
「美子……。ふえっ……」
二十二歳にもなって、すぐに涙腺が崩壊してしまう私。情けないけど、言葉より先に涙が溢れ出す。
「優香……。辛いことがあったの?いっぱい泣いていいよ。私、ちゃんと話を聞くからね」
私は泣きながら、美子に全部話した。
美子は「えーっ!?えーっ!?」って、何度も奇声を上げながら、私の話を聞いてくれた。
「凪さんもセガ君も、まるで優香と矢吹君のことを応援しているみたい。優香、もしも矢吹君と優香が運命の人なら、別れてその人の大切さがわかるってこともあるでしょう。もしかしたら……矢吹君も私みたいに落ち込んでたのかも。だから、凪さんやセガ君が心配して、優香に逢いに来たのかもしれないよ」
「……矢吹君が落ち込んでる?」
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