【7】矢吹君の秘密……? 摩訶不思議。
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帰宅すると、玄関でかめなしさんが待っていた。若干苛ついているようで、ふて腐れている。
「ママ、ただいま」
「お帰りなさい」
『お帰り、遅かったな。まさか、恵太と本気で付き合ってんの?今まで、何してたんだよ』
二階に上がると、かめなしさんも付いて上がる。部屋に入ると、かめなしさんは私の腕を掴み壁に押し付けた。
「わ、わ、何なのよ。恵太と私は友達なの。せっかく元に戻れたのに、ややこしくしないで」
『恵太と付き合ってないんだな』
かめなしさんは私に顔を近付け、クンクンと匂いを嗅ぐ。
「きゃあ、何してんの。変態!」
『猫の嗅覚は人間より鋭いからな。恵太の匂いは体についてないようだな」
「か、体につくわけないでしょう。な、何考えてるの。それより、かめなしさんに聞きたいことがあるの」
『俺に?何でも相談に乗るよ』
「その前に、壁ドンやめてくれない」
『何でだよ。壁ドン、顎クイ、頭ポンポン、人間の女子はみんな好きだと思ってたけど。これでも優香の少女向けコミックで勉強したんだよ』
「それは両想いの場合です。ていうか、勝手に私のコミックを読まないで」
『ちぇっ……』
かめなしさんは壁から手を離し、ベッドに腰を下ろす。私は机の椅子に座りポケットからメモ用紙を取り出す。
『何だソレ?』
「これ……矢吹君の新しい携帯番号なんだ」
『矢吹の……』
かめなしさんは私からメモ用紙を奪い取り、グシャグシャと丸めて口の中に放り込んだ。
「きゃあ、やだ!かめなしさんのバカ!どうして食べるの!」
ゴクンッと喉が鳴り、かめなしさんは口を大きく開けカッカッカと笑う。
サイテーだ。
まだ携帯の電話帳に登録もしていないのに。
『矢吹からもらったのか。もう矢吹に逢ったのか』
「違うわ。従弟のセガ君だよ」
『……セガ!?どいつもこいつも』
「かめなしさん?セガ君を知ってるの?どいつもこいつもって、どういう意味?」
かめなしさんの言葉の端々が、小骨が喉に刺さったみたいに妙に引っかかる。
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