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繋がれた手……
幼稚園の頃を、ふと思い出した。
恵太の手は小さかった。もちろん、私の手も小さかったけど。幼稚園の頃は同じくらいの大きさだった。
でも、恵太の手は今はこんなに大きい。
背中だって、こんなに大きい。
いつから……
恵太と私、こんなに違ってしまったんだろう。
恵太はもう……
幼なじみの恵太じゃない。
恵太のことを、初めて異性として意識した。繋がれた手に、トクトクと鼓動が速まる。
原宿にあるハンバーガーショップ。
恵太と二人でカウンターに並ぶ。
「優香はダブルバーガーだよな。チーズ?それともエッグ?ポテトはLサイズだよな。ドリンクは?」
恵太は矢継ぎ早に質問するが、私はポケットに突っ込んだメモ用紙が気になって仕方がない。
二人でハンバーガーに齧り付き、たわいない話をする。恵太はいつも以上にお喋りだ。
「優香、俺の話を聞いてる?」
「……えっ、聞いてるよ」
「だったら、俺が今何の話をしたか言ってみて」
「……それは」
「ほら、全然聞いてねーじゃん。そんなに矢吹のことが好きなのか」
「……違うよ。私は矢吹君に振られたんだから」
「だったらいいんだ。せめて俺と一緒にいる時くらい、アイツのことは忘れてくれ」
「恵太……」
「これからどこ行く?今日は俺が優香の時間をもらったんだからな。優香とのこと、いい思い出にしたいんだ」
「いい思い出だなんて。変なの。原宿なんて、いつだって遊びに来れるでしょう。今度、美子も誘って一緒に来よう」
恵太は表情を曇らせる。
「……美子はきっともう俺と話なんかしてくんないよ」
恵太の落ち込んだ口調に、恵太も美子と仲直りしたいんだということが伝わる。
「そんなことないよ。美子は恵太と前みたいに友達に戻りたいと思っているはず」
三人の関係を壊した私の言葉に、その説得力はない。
「ごめん。俺、今日はこんな話をするつもりはなかったんだ。今日は、優香と一緒に遊びたい。これ食べたらボーリングにでも行くか?それともカラオケ?映画でもいいな?」
いつもはのらりくらりしている恵太が、やけに張り切っている。その理由がわからないまま、私は恵太と久しぶりにボーリングに行き、二人でガーターばかり出してゲラゲラと笑いあった。
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