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「あれ?なーんだ、君だったのか。お久しぶり。あの時、君が言ってた彼氏ってコイツのこと?随分ダサい男と付き合ってんだな。俺の方がイケてると思わない?コイツやめて、俺と付き合わねーか?」
「お前!俺に喧嘩売ってんのか!」
「お前に喧嘩なんか売ってねーよ。だって、お前は猫パンチなんだろ。俺は警察沙汰はごめんだ」
「……猫パンチ!?どーしてそれを」
恵太は憤慨している。
猫パンチって、何のこと?
「……あ、あの。あなたの名前は……」
「俺は
彼が私に放り投げたのは、白いうさぎのぬいぐるみだった。私は両手でそれを受け取る。うさぎのぬいぐるみは、人参ではなく、くるくると巻かれた白い紙を両手で抱えていた。
「カノジョ、気が向いたらソコに電話して。待ってっからさ」
「なんだよ、アイツ。優香、そんな紙捨てちまえ」
うさぎのぬいぐるみから紙を抜き取り広げると、そこにはカタカナで『タカ』と書かれ『携帯電話の番号』が記されていた。
タカって……矢吹君のことだよね?
矢吹君は彼のことを従弟だと言っていた。
電話番号変えたんだ。
それは……
私からの連絡を避けるため?
「……あ、あの」
思わずセガを追い掛けた。
凪のことを聞きたかったから。
ゲームセンターを飛び出し、周辺を見渡したがセガの姿はどこにもなかった。
凪のように……
忽然と消えてしまったんだ。
「優香!どーしたんだよ!」
「恵太……。セガがどこにもいない……」
「は?路地曲がったんじゃね?つうか、何だよアイツ。矢吹の友達か?類は友を呼ぶっていうけど、チャラチャラしやがって似た者同士だな。矢吹も矢吹だ。俺のストレートパンチが猫パンチだなんて、他人に吹聴するとは許せない」
「恵太、猫パンチって?」
「うっさい。優香、ハンバーガー食べに行くぞ」
「あっ、うん」
恵太は私の手を掴み、少し早足で歩く。
私はセガに貰ったメモ用紙を、ポケットに突っ込んだ。
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