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――翌日、恵太が私を迎えに来た。
車はおじさんが使用しているため、最寄りの交通機関を利用して原宿に向かう。
「恵太どこ行くの?」
「優香の行きたいところ」
「……私の?別にないけど」
美子と一緒なら、ブティックやカラオケに決定だが、恵太と行きたいところなんて、すぐに思い浮かばない。
「俺達の初デートだよ。行きたいところないのか?」
「は、初デート!?これ、デートなの!?私、そんなの聞いてないし。デートなら帰る」
「だって言ったら来てくれないだろう。デートじゃなくていいから、今日だけは付き合ってくれないか」
「今日だけって、近所なんだから、いつだって逢えるのに変なの。いいよ、じゃあ、ゲーセンのUFOキャッチャーで、ぬいぐるみをゲットすること。ハンバーガーショップで、ダブルバーガーとポテトのLサイズを奢ってくれること」
「よし、ゲーセンだな。UFOキャッチャーなんて、簡単だよ。ホイホイ取ってやる。その代わりプリクラ撮ってくれよな」
「プリクラ?えっ?プリクラ?別にいいけど……」
恵太と一緒に行ったのは、高校時代に美子や恵太とよく行ったゲームセンターだった。
お気に入りのぬいぐるみを探し、ガラスケースの中を指差す。
「恵太!これがいい。白いうさぎとって」
「白いうさぎ?わかった。一発で取ってやる。任せろ」
恵太はコインを投入し、アームを動かすが掴むことが出来ない。躍起になって次々とコインを投入するものの、掴むことが出来ても持ち上げようとすると、アームからスルリとぬいぐるみが落下する。
「あーあ……」
「だ、大丈夫、大丈夫。次は必ず取る」
コインを合計すると千円は使っている。
これならショップでぬいぐるみが買えた。
恵太はよほど悔しいのか、さらにコインを投入した。
「あのさ、そのアームよく見ろよ。先の隙間も広くて直角ではなく下を向いてる。取るのは高度なテクニックを要する。あんたには無理だな」
「なんだと!」
振り向くとそこには……
見覚えのあるチャラ男が立っていた。茶髪にピアス。趣味の悪い派手な赤いシャツ。ダボダボの腰パンには、ジャラジャラとチェーンがぶら下がっている。
「あ、あなたはあの時の……!?」
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