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かめなしさんは、それから二日たっても家に帰って来なかった。
「優香どうしよう。事故に遭ったのかな。それとも……猫は死期を悟ったら、家では死なないって言うでしょう。ま、まさか……」
「やだ。あんなにピンピンしていたのに、死ぬなんてありえないよ。それにまだ二十三歳だし」
「二十三歳?かめちゃんは二歳だよ」
「に、人間の年齢に換算したらだよ」
「そっか。でも年齢なんて関係ないよ。もしも、事故に遭ってひき逃げされたとしたら……」
「ママ……やだ……。変な事、言わないで」
そういえば、矢吹君に振られた日、かめなしさんの腕の中で眠ってしまい、目覚めた時にかめなしさんと頬が密着していて、思わず突き飛ばしてしまったんだ。
――『……そんなに、俺がキライ?』
確か、かめなしさんはそんな事を……
呟いたような……?
「まさか?家出?」
「優香、家出って何よ?」
「いや……そんな、気がしただけ」
「ママね。かめなしさんのビラを作ったの。あとで、町内に貼紙してくるわ」
「……うん、そうだね。私も、美子や恵太に聞いてみるよ」
夜になり、美子と恵太にLINEした。
母の貼ったビラを見て、二人ともかめなしさんが行方不明だということは知っていた。
【優香、まだかめちゃん戻らないの?】
【うん……】
【なんかさ。アイツがいないと寂しいな。明日駅の周辺を捜してみるよ。かめなし、雌猫追っかけて、迷子になってるかもだし】
【かめちゃん、何処に行っちゃったのかな?私も明日周辺捜してみるね。】
美子と恵太からLINEが次々と送られ、私も落ち着かなかった。
――翌朝、母の車に乗り込みかめなしさんを捜す。母は顔面蒼白でハンドルを握っていた。
「優香……。今朝貼紙しながら、ご近所にかめちゃんのことを聞いたの。そしたら……」
「どうしたの?」
「三日前にね。そこの角を曲がった車道で、猫が車に引かれて死んでたって……」
「えっ……うそ……」
全身から、血の気が引くのがわかる。
そんなこと……嘘で……しょう?
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