【5】運命の赤い糸は何本もある? 摩訶不思議。

65

 ―月曜日―


 スポーツクラブの日だったが、美子は私を誘いに来なかった。


 スポーツクラブの準備をしていると、恵太が一人で来た。


「美子は体調悪いから休むって、俺も今日は止めとくわ」


「……恵太。私、見たんだよ。美子と昨日何を話してたの?美子、泣いてたじゃない。どうして、泣かせるのよ!どうして、美子じゃだめなの!」


「……優香、ギャアギャア喚くなよ。俺だって泣きてーよ。何でこうなるんだよ。俺はお前のことが好きなんだよ。自分の気持ちに嘘ついて、美子と付き合えるわけないだろう!美子は俺の大切な幼なじみで、俺の親友なんだよ」


「……私だって、親友だよ」


「俺達、もう今まで通りにはいかなくなったんだ。美子はもうすぐ就職だし、このままスポーツクラブは辞めると思う。俺も……今月末で辞めるつもりだ」


「……恵太」


「優香は矢吹と逢うんだろう。一人で行けよ。じゃあな」


 恵太は私に背を向けた。

 私はサンダルを履いて恵太を追い掛ける。


「……恵太。待ってよ。恵太……」


「追い掛けてくんなよ。どれだけ俺を惨めにさせたら気が済むんだよ。俺だって、傷付いてんだ」


「……けい……た」


 恵太の言葉が胸に突き刺さる。

 涙が溢れて止まらなかった……。


『優香、恵太をそっとしておいてやれ』


 地面にしゃがみ込み泣いている私の肩に、かめなしさんがそっと手を置いた。


 ――結局、私もその日はスポーツクラブを休んだ。


 矢吹君から電話が掛かってきたけど、とても話が出来る状態ではなく、【ごめんなさい。キャンプの疲れが出たみたい。今日は休むね。】とだけ、LINEした。


【大丈夫?ゆっくり休んで。今日はみんな休みなんだね。俺はジムでトレーニングして帰るよ。】


 矢吹君はいつだって、パワフルだな。

 それに謎だらけで、母の言うとおり、私は矢吹君のことを何も知らない。


 恵太のことは、ちっちゃい頃から知ってるのに。



 ――その日を境に、美子も恵太も私の家に来ることはなくなった。金曜日、私はスポーツクラブの継続手続きをしたが、その時、恵太と美子が退会したことを知った。


 洋子も恵も退会していて、私はいつの間にか一人ぼっちになった。


 みんながいたから楽しかったスイミング。恵太と美子が私から離れ、右の羽と左の羽をもぎ取られたように、私は飛びことも動くことも出来ず、フロントに立ち尽くした。


「上原?どーした?」


「……矢吹君。ふ、ふえぇぇっ……」


 子供みたいに泣き出した私に、矢吹君は慌てている。


「どーしたの?とりあえず椅子に座って」


 





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