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でも……
不思議なんだ。
家で飼うことが決まった途端、かめなしさんは元気になった。ヨロヨロしていたのに、ピョンピョンと走り回りテーブルや椅子の上に飛び乗るようになった。
まさか……!?
アレは仮病で、空腹だっただけとは思いたくはないが、もしもそうだったとしたら、かめなしさんに【主演男優賞】あげるよ。
◇◇
私は矢吹君に、かめなしさんを拾った時の様子を話す。後部座席を見ると、かめなしさんはシートの上で丸くなって寝ている。
時折、猫耳がピクピクと動く。
人間だけど、寝姿は猫みたいだな。
いや、猫なんだけど、人間みたいなのかな。
だんだんわけがわかんなくなる。
かめなしさんと一緒にいること自体が、ラノベの異世界ファンタジーに迷い込んだみたいだから。
「異世ファンが好きなんだね。驚いたな。確かに、ナイトはイケメンだよね。異世ファンは日本での活動は休止中なのに、まだ好きなんだね」
「うん。大好き。異世ファンは元々海外で活動してるバンドなんだよ。海外でのバンド名は違うみたいだけど。いつになったら、復活ライヴしてくれるのかな。全てが謎のベールに包まれていて、本当に異世界から転移したんじゃないかって思えるくらい」
テンションが上がる私に、矢吹君は笑みを浮かべる。
「転移か……。何だか、妬けるな。ナイトが恋のライバルに思えてきた」
「……っ、そんなんじゃないよ。矢吹君はナイトより、断然カッコいいもの」
「ありがとう」
異世ファンは活動休止中だけど、私の
矢吹君は真っ直ぐ自宅まで送ってくれた。古い住宅の建ち並ぶ街にピカピカのポルシェが異彩を放つ。
矢吹君はトランクから私の荷物を取り出した。私はドアを開け後部座席で寝ているかめなしさんを揺り起こす。
「かめなしさん、家に着いたよ。起きて」
『ふあぁ~!よく寝た。もう着いたのか。ああ、お腹空いた』
かめなしさんはピョンと車から飛び降り、矢吹君をジロッと見た。
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