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「かめなしさんは野良猫だったんだ」


 私はかめなしさんとの出逢いを、思い出す。


 ◇◇


 ――二千十五年――


 冬の寒い日に、マルメゾンワールド高校の校庭に仔猫が迷い込み木陰に蹲っていた。


 白い毛は薄汚れ、ガリガリに痩せていて、立つとヨロヨロしていて普通に歩くことが出来なかった。


 そのみすぼらしい姿に、他の生徒は見て見ぬ振りをし、通り過ぎる。


 美子と自転車を押しながら正門に向かうと、仔猫は『ニャーニャー』鳴きながら付いて来た。


『怪我でもしたのかな?それとも交通事故にでも遭ったのかな?ヨロヨロしてる』


 可哀想になり、思わず抱き上げた。


 雪も降り始め……

 仔猫はぶるぶる震えて……。


 私は動物は苦手だけど、このまま見捨てて帰ることが出来なくて、首に巻いていたマフラーを自転車のカゴに入れ、その中に仔猫を入れ連れて帰った。


 うちの両親は動物アレルギーがあり、『動物は飼わない』と常日頃から言っていたため、当初は美子の家で世話をしてもらった。


 美子の家には二匹のポメラニアンと一匹のペルシャ猫がいるため、『新しい飼い主が見つかるまで』との条件付きで、おじさんとおばさんの許可をもらった。


 住宅街や最寄りの駅前に『飼い主募集』の貼り紙をしたけど、誰からも申し入れはないまま、日にちだけが過ぎる。


 冬休みに美子が家族旅行に出掛けることになり、その間だけ私の家で数日預かることになった。


 こっそり連れ帰り、仔猫をクローゼットに隠していたが、すぐに鳴き声で母にバレた。動物アレルギーの両親が、ガリガリに痩せた仔猫を見て、拒絶すると思っていたが、二人とも弱々しい仔猫を不憫に思ったのか、クシャミを連発しながらも、数日だけの約束で許可してくれた。


 だが、その数日ですっかり情が湧き、頼みもしないのに猫のオモチャや猫のオヤツを購入するようになり、最終的に家に居座ることとなった。


 今では動物アレルギーも克服し、かめなしさんにメロメロだ。


 どうして『かめなしさん』と名付けたかというと、ニ千十四年にメジャーデビューしたバンド『異世界ファンタジー』のギタリスト、亀梨騎士ナイト・カメナシの大ファンだったから。


 『異世界ファンタジー』は四人組のバンドで、タカもセガもナイトもナギもメイクを施しているから素顔は公表されていないし、性別も年齢も不詳だ。


 拾った当日は、異世ファンが活動休止を発表し忽然と姿を消した日。だから、この出逢いが運命としか思えなかったし、ナイトの代わりに『かめなしさん』って呼べる相手が欲しかった。


 名付けの理由は、それだけ……。

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