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『優香、アイツとキスをしたのか。アイツ、俺の優香に……。もう手を出したのかよ!許さねー!』
「うわっ、かめなしさんやめて!」
かめなしさんは一瞬の隙を突き、矢吹君に飛び掛かろうとしたが、恵太に首輪の後ろを掴まれ、バタバタしている。
『恵太!離せ!お前だって、本当は殴りたいくせに!』
「優香、飼い猫くらいちゃんと世話しろよな。昨日から、フーッフーッ煩いったら、ありゃしない」
「……ごめん」
恵太にかめなしさんを渡され、仕方なく両手で受け止める。本当は手を離したいけど、みんなの手前離せない。
『優香、みんなの前でそんなに抱き着くなよ。照れちゃうな』
かめなしさんは調子に乗り、私を抱き締め唇を尖らせる。
……ていうか、そんな顔してもキスなんてしないからね。
「洋子、さっきの話だけど。俺と優香は付き合ってねーから。確かに、昨日の夜、俺は優香に告白した。けど、振られたんだ。優香は二股なんてしてねーよ。優香は矢吹と付き合ってる。それだけだよ」
恵太の言葉に、洋子はバツが悪そうに視線を逸らし、カンジは妙なテンションで恵太に近付く。
「恵太、振られたのか?可哀想に!ヨシヨシ、俺と宏一が慰めてやるよ」
二人で恵太をコショコショと擽り、恵太は「バカ、よせや」と、逃げ回っている。
『恵太は、いいやつだよな。優香を守るために、戦わずして自滅を選ぶとは。俺なら、矢吹とタイマン勝負するのにな。コイツは天敵だからな』
「……恵太」
『本当は恵太が一番、優香のことを思ってるのかも。けど、俺の愛には叶わないけど』
「……バカ」
気付くとそこに美子の姿はなかった。
――朝食のあと、所属チームに戻らなければならない松野君を見送る。居心地が悪くなったのか、洋子も恵も「用事があるから帰る」といい始め、私達も片付けを始める。
「琴美、私達もう暫くキャンプ場で遊ぶわ。子供達がまだ帰りたくないっていうから」
「わかった。奏兵君、美砂ちゃん、またね。バイバイ」
「琴美も俺の車に乗れよ。送ってくから」
「本当?サンキュー恵太」
「じゃあ、琴美またね」
「洋子、恵、ひろこ、またね。バイバイ」
洋子達は一足先にキャンプ場をあとにし、恵太の車にはカンジと宏一、美子と琴美が乗り込んだ。
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