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 ――午後十時。

 一兵と真砂美は子供達を寝せるために、テントに戻る。


「子供って、本当に可愛いね。次は誰がゴールインするのかな?松野君は琴美との結婚考えてるの?」


 恵の唐突な質問に、松野君は少し戸惑っている。


「俺はまだ二軍だから。高校野球で騒がれたけど、プロの道は甘くないからね。一軍になり、いずれはメジャー目指してるんだ。夢を掴むまで結婚は考えられない」


「そうだよ。松野君はまだ二十歳なんだよ。大好きだけど、結婚なんて全然考えてないよ。私達、今が楽しければいいの。ね、松野君」


 二人は顔を見合わせ、ニコッと笑った。


 いいムードだな。

 好きな人に『好き』と素直に言える琴美が羨ましい。


 そんな女子トークにも、美子は浮かない顔をしている。


「美子、元気ないね?どうしたの?」


「少し疲れたみたい。先に休ませてもらうね」


「……美子?」


『美子の気持ち、よくわかるな』


「わかる?何がわかるの?」


『恵太のあんな態度を見れば、ショック受けるよ』


「確かに、恵太はどうかしてる。矢吹君にあんな風に突っかかるなんて、男として最悪だよ」


 かめなしさんは呆れたように私を見た。


『最悪なのは優香だよ。恵太が怒っていたのは、優香が好きだからだ。美子が怒っているのは、そんな恵太を見たからだ。まだわかんねーの?』


「……嘘」


『嘘じゃねーよ。アイツに告白されて、いい気になってんじゃねーよ。そもそもアイツをキャンプに連れて来たこと自体、失敗なんだよ。恵太の気持ちも、美子の気持ちも、洋子の気持ちも逆なでしてる』


「……そんなつもりじゃ」


 矢吹君は松野君と楽しそうに話をしている。洋子はあれから私を避けている。カンジはそんな洋子にちょっかいを出し、洋子の機嫌をさらに悪化させている。


 悪循環だ……。


『カンジは洋子が好きなんだな。このキャンプ、何角関係なんだよ?人間って、複雑だよな。俺達の種族の方が一途かも』


 どこが一途なのよ。

 女子全員にスリスリしちゃって、よくいうよ。


 ――深夜零時、それぞれのテントに分かれ就寝する。


「上原、おやすみ」


「……矢吹君、おやすみなさい」


『ふん、行こうぜ、優香』


 かめなしさんは私の肩を抱いた。


 は?何でかめなしさんが女子のテントに紛れ込むのよ。信じらんない。

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