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「ほらほら、お肉が焦げちゃうよ。せっかくみんなで集まったのに、楽しくやろうよ。カンジ、一人で食べてないで、みんなにビール配って。真砂美、オチビちゃんにオレンジジュースあるからね」
「あっ、うん。ありがとう」
カンジがみんなにビールを配り、真砂美は子供達にオレンジジュースを渡す。
「矢吹君と優香が付き合ってることは、私、聞いてたんだ。洋子と矢吹君は同じスポーツクラブなんだよね?恵太が考えてるような関係じゃないんだから。一人でカリカリしないで。乾杯しよ」
洋子は完全にむくれてる。
恵太も完全にむくれてる。
矢吹君の告白と、琴美の発言に、私は顔を上げることが出来ず俯いたままだ。
ふと隣にいた美子に、目で助けを求めた。
いつもなら、優しく声を掛けてくれる美子が、浮かない顔をし視線を合わせようとしない。
『あーあ、アイツのせいで、バーベキューが台無しだな。優香が好きだなんて、みんなの前で告白するなんて、サイテーだよ。俺がいるのに、優香と付き合えると思ってんの?』
空気が読めないのは、かめなしさんの方だよ。
松野君の乾杯の音頭で、みんなはビールを飲みバーベキューを堪能する。アルコールが弱い恵太が、次々とビールを空にする。
矢吹君が私の傍に来て、「ごめん」って小声で呟いた。
「私こそ、イヤな思いをさせてごめんね。恵太と同じテントで大丈夫?」
「大丈夫だよ。もう喧嘩はしないから」
矢吹君と初めてのキャンプ、ビールが何倍も苦く感じられた。
――バーベキューを終え、険悪だったムードが、小さな子供達と一匹の猫により徐々に和む。
子供と小動物は、それだけで癒される。
かめなしさんの正体が見えている私以外は……。
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