【4】恋の迷路で迷子になる? 摩訶不思議。

52

 恵太達がキャンプ場に戻り、それから三十分くらいして、矢吹君と洋子が戻って来た。


 恵が二人を冷やかし、洋子は満更でもなさそうに上目使いで矢吹君を見上げる。


「上原がポルシェの助手席に乗っていたから、てっきり上原と付き合ってると思ってたよ。宮地の彼氏とはね」


 カンジの言葉に、恵太が矢吹君を睨み付けた。


「チャラチャラしやがって」


 楽しいはずのバーベキューなのに、恵太の一言でその場が険悪な雰囲気となる。


 ジュージューと肉が焼ける音がし、食いしん坊の宏一がクンクンと鼻をひくつかせた。


「恵太、そんなこと別にどうでもよくね?腹減ったよ。まずは、ビールで乾杯だな」


「よくねーよ!大体、何で矢吹がここにいるわけ?次から次へ手え出して、二股して遊ぶつもりなんだろ」


 怒りが収まらない恵太を、松野君がたしなめる。


「中原君、もうその辺でいいだろ。年下の俺が口を挟むのもなんだけど、俺もさ、マルメゾンワールド高校の卒業生じゃないけど、こうして参加してるわけだし、楽しくやろうよ」


「松野君は琴美と付き合ってるからいいんだよ。俺は女の気持ちを弄ぶコイツが気に入らねーんだよ!」


「恵太、いい加減にしなよ」


「優香はいいのかよ。コイツは洋子とも付き合ってんだぞ!」


 どんどんエスカレートする恵太、洋子はツンとすましこれ見よがしに矢吹君の腕に手を回した。


 黙って聞いていた矢吹君が、重い口を開く。


「俺の行動が、中原を不快にさせたなら謝るよ。宮地さんごめん。俺は上原が好きなんだ。真剣に付き合いたいと思っている。このキャンプも、俺が上原に参加したいと頼んだ。上原の友達と仲良くなりたかったから。でも楽しい雰囲気を壊してしまったみたいだね」


 矢吹君の突然の告白に、恵太は目を見開き、プライドを傷付けられた洋子が唇を噛み締めた。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る