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矢吹君との僅かな時間は、洋子や恵に邪魔をされたが、それでも矢吹君の隣にいられたことが嬉しかった。
矢吹君は約束通り、私がボートから降りたあと、洋子を隣に乗せた。
「やばっ、もうこんな時間だよ。バーベキューの準備しなきゃ。優香、先にテントに戻ろう」
「……えっ?先に?……そうだね」
恵は洋子に手を振る。
「洋子!先に行くねー!」
洋子は余裕の笑みで手を振り、矢吹君に凭れ掛かる。恵はそのツーショットを携帯電話のカメラに収めた。
その光景に、これは洋子と恵の作戦だと気付く。
矢吹君と洋子が二人きり。
どんな話をしているのだろう。
矢吹君は優しいから、どんな話も笑顔で受け入れそうだ。
―オートキャンプ場―
後ろ髪を引かれる思いでキャンプ場に戻る。すでに炉とテーブルのセッティングはされ、琴美や美子が手際よく食材を切っていた。
「ごめん。遅くなって」
「あれ?洋子は?」
「洋子は矢吹君とボートに乗ってるの」
恵はさっき撮影した写真を、みんなに見せた。
「わあ~!絵になるね。いいカンジ。矢吹君と洋子付き合ってるんだ。あんなイケメンゲットするなんて羨ましい」
何も知らないひろこが、かめなしさんをナデナデしながら写真を食い入るように見た。
「まさか、三角関係だったとは」
琴美が私の耳元でボソッと呟く。
『まさか、三角関係だったとは』
かめなしさんがフンと鼻を鳴らし、琴美の口調を真似た。
「三角関係じゃないってば!」
「……あっ、ごめん」
私の声に琴美は驚いたように目を見開き、かめなしさんはニヤリと笑う。
思わず、かめなしさんを睨み付けた。
『だから、俺にしとけ。アイツは女なら誰でもウェルカムなんだよ』
「それは、かめなしさんでしょ」
『俺は優香だけだよ。お前しか愛せない』
「冗談は顔だけにして!」
「優香!?顔だけにしろって、私は確かに美人じゃないけど、愛嬌と男を見る目だけは誰よりもあると思ってるんだけど」
「琴美、違うの。ごめん……気にしないで」
どーしてこうなっちゃうの。
全部、全部、かめなしさんのせいだからね。
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