49
◇
少し遅めの昼食を済ませ、午後三時。
水上アスレチックを楽しみ、足を踏み外しずぶ濡れになった恵太やカンジに、みんなは大爆笑している。
本当にドジなんだから。
できるだけみんなと行動を共にし、太陽の光を全身に浴びる。
就職が決まらずずっと燻っていたけど、いっぱい笑ったら、気分も晴れた。
一人……いや、一匹さえいなければ。
「六時からバーベキューするから。一時間フリータイムね」
琴美は松野君と手を繋ぎ、バイバイと手を振る。一兵と真砂美は子供達を連れてポニー牧場に向かった。
恵太は男子と三人で、子供みたいにアスレチックに興じてる。
美子はひろこ達と「植物園に行こう」って、話してる。
「上原、ボート乗らない?」
『……ボート?いいぜ。喧嘩なら受けてたつ』
どうしてかめなしさんが返事をするのよ。矢吹君は喧嘩なんて、一言も言ってないし。
「この猫も乗りたいのかな?猫って水怖くないの?」
『ふん、怖かねーや。猫、猫と、うるせぇぞ』
「……ペダルボート二人乗りだから」
「この猫、名前はかめなしだっけ?ちょっと狭いけど、かめなしも乗るか?」
『おい、俺を呼び捨てにするな。俺を呼び捨てにするなんて百年早いんだよ。大体、お前は優香の何なんだよ。俺の方が優香と先に逢ったんだ。横取りは許さねぇ!』
かめなしさんは「フーフー」と唸り声を上げ、矢吹君を威嚇している。
「かめちゃん。おいで。私と花を見に行こう」
美子がかめなしさんをヒョイと抱き上げた。美子に抱き上げられ、かめなしさんはデレッと頬を緩め、美子の頬をペロリと舐める。
『美子、みんなが見てるよ。そんなに俺とデートしたいのか?照れるなぁ』
このセクハラ男め。
どさくさに紛れて、美子にキスするなんて。
「優香、二人で行って来なよ。かめちゃんは私が預かるから」
『うわ、わ、アイツらを二人きりにしちゃダメだってば』
かめなしさんは美子に抱きしめられ、バタバタと暴れている。
「恵、私達もボートにしよう」
「えっ?ボート?やだよ」
「いいから、来なさい」
洋子は恵の腕を掴み、矢吹君の隣をしっかりキープした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます