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 ◇


 少し遅めの昼食を済ませ、午後三時。

 水上アスレチックを楽しみ、足を踏み外しずぶ濡れになった恵太やカンジに、みんなは大爆笑している。


 本当にドジなんだから。


 できるだけみんなと行動を共にし、太陽の光を全身に浴びる。


 就職が決まらずずっと燻っていたけど、いっぱい笑ったら、気分も晴れた。


 一人……いや、一匹さえいなければ。


「六時からバーベキューするから。一時間フリータイムね」


 琴美は松野君と手を繋ぎ、バイバイと手を振る。一兵と真砂美は子供達を連れてポニー牧場に向かった。


 恵太は男子と三人で、子供みたいにアスレチックに興じてる。


 美子はひろこ達と「植物園に行こう」って、話してる。


「上原、ボート乗らない?」


『……ボート?いいぜ。喧嘩なら受けてたつ』


 どうしてかめなしさんが返事をするのよ。矢吹君は喧嘩なんて、一言も言ってないし。


「この猫も乗りたいのかな?猫って水怖くないの?」


『ふん、怖かねーや。猫、猫と、うるせぇぞ』


「……ペダルボート二人乗りだから」


「この猫、名前はかめなしだっけ?ちょっと狭いけど、かめなしも乗るか?」


『おい、俺を呼び捨てにするな。俺を呼び捨てにするなんて百年早いんだよ。大体、お前は優香の何なんだよ。俺の方が優香と先に逢ったんだ。横取りは許さねぇ!』


 かめなしさんは「フーフー」と唸り声を上げ、矢吹君を威嚇している。


「かめちゃん。おいで。私と花を見に行こう」


 美子がかめなしさんをヒョイと抱き上げた。美子に抱き上げられ、かめなしさんはデレッと頬を緩め、美子の頬をペロリと舐める。


『美子、みんなが見てるよ。そんなに俺とデートしたいのか?照れるなぁ』


 このセクハラ男め。

 どさくさに紛れて、美子にキスするなんて。


「優香、二人で行って来なよ。かめちゃんは私が預かるから」


『うわ、わ、アイツらを二人きりにしちゃダメだってば』


 かめなしさんは美子に抱きしめられ、バタバタと暴れている。


「恵、私達もボートにしよう」


「えっ?ボート?やだよ」


「いいから、来なさい」


 洋子は恵の腕を掴み、矢吹君の隣をしっかりキープした。

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