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矢吹君が参加することを知っているのは、琴美と美子だけ。ニ人は心配そうに私を見ている。
「優香、電話してみたら?」
「……うん」
琴美に促され、携帯電話を見つめる。
――その時、白のポルシェが学校の前にスーッと停車した。みんなの視線は、一斉にポルシェに向けられた。
ポルシェから降り立ったのは、サングラスを掛け、ラフな白いシャツとジーンズを穿いた矢吹君だった。
「皆さん遅くなってすみません。学校の場所がわからなくて、迷ってしまって……」
「矢吹君?やだ、どうして矢吹君が?来るならそう言ってくれればよかったのに。知ってたら私、車出さなかったのに」
洋子は矢吹君に走り寄り、熱い眼差しを向ける。恵太が矢吹君を睨みつけた。
「何で、矢吹がいるんだよ。お前はマルチメゾンワールド高校の卒業生でも、理科部でもねーじゃん」
「……それは」
「やだ。恵太、それ私の彼氏や真砂美に喧嘩売ってるの?このキャンプは彼氏や家族同伴OKなんだよ」
琴美にたしなめられ、恵太は口をへの字に歪ませた。
「矢吹は同じスポーツクラブってだけで、誰かの彼氏じゃないだろう。もしかして、洋子と付き合ってんのか?」
「やだあ、恵太。私と矢吹君だなんて」
洋子はヘラヘラと笑いながら、頬を赤らめ体をくねらせた。
「優香にこんな素敵な彼氏がいるなんて、驚いたな」
琴美の一言に、その場の空気が凍り付いた。
「優香の彼氏?」
「さあ、行こう!出発進行!各自、車に乗って。ひろこは洋子の車でいいんでしょう」
琴美に促され、恵太の声が掻き消される。
恵太の助手席にカンジが乗り込み、宏一と美子が後部座席に乗り込む。恵太の車に乗り込もうとしたら、美子にバタンとドアを締められた。
車の窓がスーッと開く。
「5人乗ると窮屈だから、優香は矢吹君の車に乗ってね」
「……み、美子」
「恵太、車出して」
「……っ、美子!何で優香が矢吹の車なんだよ。ポルシェなんて、レンタカーじゃねーの。このキザ野郎が」
「優香、矢吹君待ってるよ」
「……美子。ありがとう」
恵太は怒ったようにアクセルを踏んだ。
洋子も、怒ったようにアクセルを踏む。
二台の車のタイヤがキキーッと悲鳴を上げた。
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