42
美子は私から視線を逸らした。
恵太と上手くいってないのかな。
私まで緊張する。
明日のキャンプで、恵太と美子を仲直りさせないと。
「あっ、いたいた。優香、昨日あれから矢吹君と逢ってないよね?」
洋子に話し掛けられ、思わず首を左右に振る。
「逢ってないよ。用事を思い出し、本屋にも行かず真っ直ぐ帰ったから」
「なんだ、そうだったんだ。矢吹君の言ったこと本当だったみたいね」
「……それどういう意味?」
「昨日、優香が帰ったあと、矢吹君もすぐに席を立ったから。もしかしたら、優香を追い掛けたんじゃないかって、恵と話してたんだ。けど、さっき矢吹君に確認したら、違うっていうからさ」
矢吹君……
あれからすぐにカフェを出たんだ。
「私達、四月から社会人だし。スポーツクラブも夜じゃないと来れないし。矢吹君も就職決まってるのかな?私達と同じ歳だよね?優香、何か聞いてない?」
矢吹君の就職先、聞いてなかった。
そんな話に、全然ならないし。
スポーツクラブの時間変更なんて、考えたこともなかった。
みんな夜の時間帯に変更するか、辞めちゃうんだろうな。矢吹君も、変更するのかな。
明日のこと、まだ話してない。
車、どうなったんだろう。
あと一台、誰が出すのかな。
「車、私出すから。就職祝いにパパが新車買ってくれたんだ。軽自動車だけど、初ドライブだよ。優香、乗る?」
初ドライブ……か。
それはそれで、ちょっと怖いかも。
「私は……。恵太が車出せるみたいだし」
「そうなんだ。楽しみだね」
「……うん」
その日、いつものように時間を過ごし、スイミングのあとは三人でキャンプの買い物をし、購入した品は恵太の家に配達してもらうことにした。
――夜、矢吹君からメールが入る。
【明日、オートキャンプだよね。俺、車出すから】
【いいの?】
【うん。上原と二人で乗りたいからさ】
わ、私と……二人で!?
車の台数は、足りている。
でも、鼓動がトクトクとスキップし、NOとは言えなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます