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 ―金曜日―


 いつものように、恵太と美子が迎えに来てくれたが、二人は妙にギクシャクしている。


 その証拠に、美子は恵太と目を合わせようとしない。


『ほら、微妙な空気だろ。これは、アレだな。恵太が熱くなってる証拠だ。優香にはがいるんだから、どんなに足掻いてもムダなのにな』


 かめなしさんは私に抱き着こうとしたが、瞬時にそれを交わす。


 なに、言ってんだか。


 美子はかめなしさんの頭を、いつものようにナデナデしている。目を細め咽をゴロゴロ鳴らせるかめなしさん。まじで、キモイ。


「恵太、顔が怒ってるよ。どうしたの?おばさんと喧嘩でもした?悩みあるなら聞くけど」


「は?母ちゃんとケンカなんかしてねーし。優香、月曜日にスポーツクラブのあと、一人で何処行ったんだよ」


「……何処って。私だって用事くらいあるし。幼なじみだからって、いつも三人一緒なんてあり得ないし。運動会の三人四脚じゃないんだから。ずっとくっついていられないでしょう」


「三人四脚?上等じゃねーか。俺達は幼なじみだ。一生三人四脚してやる」


 ていうか、意味わかんない。

 一生ってなに?


「そろそろ、恵太も二人三脚すれば。身近に素敵な女子がいるでしょう」


 私の言葉に美子が顔を俯かせ、恵太は瞳を輝かせた。


「……俺だって、二人三脚したいけどさ。それは相手次第だし。けど、自分のことを素敵だなんて、よく言うよ」


『ほらほら、赤くなった。これは優香との二人三脚を妄想してるんだ。俺の優香と二人三脚なんてさせねーよ。恵太は一生ムカデ競走してろ』


「……ムカデ競走してろ?ププッ」


「俺にムカデ競走しろってか。俺をバカにしてるのか。美子、行こうぜ」


 かめなしさんに返した言葉を、恵太は勘違いしている。


 私は美子と二人三脚しなさいって、言ってるの。


 美子がどれだけ恵太のことが好きか、私は知っているから。


 こんなに美人で素敵な女子が傍にいるのに、まだわかんないのかな。




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