40
―金曜日―
いつものように、恵太と美子が迎えに来てくれたが、二人は妙にギクシャクしている。
その証拠に、美子は恵太と目を合わせようとしない。
『ほら、微妙な空気だろ。これは、アレだな。恵太が熱くなってる証拠だ。優香には俺という恋人がいるんだから、どんなに足掻いてもムダなのにな』
かめなしさんは私に抱き着こうとしたが、瞬時にそれを交わす。
なに、言ってんだか。
美子はかめなしさんの頭を、いつものようにナデナデしている。目を細め咽をゴロゴロ鳴らせるかめなしさん。まじで、キモイ。
「恵太、顔が怒ってるよ。どうしたの?おばさんと喧嘩でもした?悩みあるなら聞くけど」
「は?母ちゃんとケンカなんかしてねーし。優香、月曜日にスポーツクラブのあと、一人で何処行ったんだよ」
「……何処って。私だって用事くらいあるし。幼なじみだからって、いつも三人一緒なんてあり得ないし。運動会の三人四脚じゃないんだから。ずっとくっついていられないでしょう」
「三人四脚?上等じゃねーか。俺達は幼なじみだ。一生三人四脚してやる」
ていうか、意味わかんない。
一生ってなに?
「そろそろ、恵太も二人三脚すれば。身近に素敵な女子がいるでしょう」
私の言葉に美子が顔を俯かせ、恵太は瞳を輝かせた。
「……俺だって、二人三脚したいけどさ。それは相手次第だし。けど、自分のことを素敵だなんて、よく言うよ」
『ほらほら、赤くなった。これは優香との二人三脚を妄想してるんだ。俺の優香と二人三脚なんてさせねーよ。恵太は一生ムカデ競走してろ』
「……ムカデ競走してろ?ププッ」
「俺にムカデ競走しろってか。俺をバカにしてるのか。美子、行こうぜ」
かめなしさんに返した言葉を、恵太は勘違いしている。
私は美子と二人三脚しなさいって、言ってるの。
美子がどれだけ恵太のことが好きか、私は知っているから。
こんなに美人で素敵な女子が傍にいるのに、まだわかんないのかな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます