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「えっ?まさか?」
『これは、猫のカンだ』
「何、猫のカンって?猫缶?」
『バーカ、動物的直感だよ。間違いない』
かめなしさんはニヤリと口角を引き上げた。
「かめなしさんのカンなんて、参考にはならないよ。恵太と私は幼稚園の頃からの幼なじみなんだよ。兄弟みたいに育ったんだから。恋愛感情なんてナイ」
と、いいつつ……。
幼なじみなのに、美子は恵太にずっと片想いしている。
『なんで断定できるんだよ。男のキモチ、わかってねーな』
男のキモチってなに。
少なくとも私は恵太を異性として意識したことなんてない。
まして、かめなしさんは男ではなく、オスだから。人間の男のキモチなんてわかるはずもない。
「もう部屋から出てくれる?就活に集中出来ないの」
『パソコン開いて、求人情報閲覧してるだけだろ。エントリーする気もサラサラないくせに、それで就活してる気になってるなんて、ただの自己満足だろ』
かめなしさんの言葉が、グサリと胸に突き刺さる。
私だって、焦りはある。
能天気だとか、天然だとか、干物女だとか、みんなから言われてヘラヘラしているけど、本当は気にしない振りをしているだけで、何気ない一言に傷付くこともあるんだよ。
「もう出て行って」
思わず、猫相手に苛つく感情をぶつけてしまった。かめなしさんはふて腐れたように振り返り、部屋を出て行く。
机の横にはコルクボード。
私と美子と恵太の写真を貼り付けている。別に恵太と一緒に写真を撮りたいわけじゃない。
美子と一緒にいると、お菓子のオマケみたいに必ず恵太が付いてくる。でもそれは、恵太が美子のことを好きだからだと、思っていた。
その恵太が……私のことを好きだなんて。
そんなこと、あり得ない。
かめなしさんが人間に見えるくらい、摩訶不思議な出来事だ。
猫のカンなんて、あてにならないよ。
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