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帰宅し、すぐに美子にLINEした。
【美子、ふたりきりのデートどうだった?】
【デートじゃないし。優香と矢吹君が一緒にいるところを見せたくなくて、駅前の本屋まで行ったけど、恵太はずっと不機嫌だったんだ。優香はどうだったの?】
【あたしも全然ダメ。カフェで洋子と恵に鉢合わせして、数分で終わった。】
【洋子と恵か……。そこまでは考えてなかったな。それで、優香が帰ったの?】
【……うん。矢吹君が洋子に一緒にどうぞって誘ったの。矢吹君はみんなに優しいから。】
【だから、矢吹君はやめた方がいいって、言ってるでしょう。ごめん、今から英会話なんだ。またね。】
【うん。またね。】
スポーツクラブに英会話。
大学を卒業しても、美子は忙しいんだね。
でも、『矢吹君はやめた方がいい』なんて、ちょっと傷付く。
階段に座っていると、背後から声がした。超、不機嫌な声だ。
『遅いぞ!』
「やだ。いつからそこにいたの?」
『優香が帰ってからずっといたよ。今まで何、やってたんだよ!』
「スポーツクラブだよ。月曜日と金曜日はスイミングだから」
『ほんとかよ?男とデートしてたんじゃねーの』
「怒鳴らないでよ。まさか、猫のくせに妬いてるの?」
『……ッ、ネコノクセニ……』
私が二階に上がると、かめなしさんが後ろをスタスタついてくる。
「だから……何でついてくるのよ」
『いいじゃん、別に……。俺の勝手だろ』
部屋のドアを閉めようとすると、隙間からスルリと入り込んだ。
「だから、入らないで」
『いいじゃん、別に……』
「ベッドに上がらないでね」
『いちいち、うるさいなぁ……』
「ねぇ、かめなしさん。ちょっと聞いてみるんだけどさ」
『何だよ』
「あのさ……恵太なんだけど。最近、なんか不機嫌でさ。何でだろうね?」
『恵太のことなんて、知るかよ』
「だよね。かめなしさんに聞くなんて、間違ってた。猫に聞いてもわかんないよね。パソコンで求人情報調べるから、出て行ってくれる」
パソコンを開き求人情報のサイトをクリックし、事務職を探す。特にこれといった理由があるわけではないけど、営業職より事務職がいい。
かめなしさんは猫みたいに、右手でキーボードをチョンチョン触って遊んでいるが、邪魔をしているに過ぎない。
「あのー……。邪魔なんだけど」
『つめたいなぁ。俺もさ、優香の事好きだから、わかるんだけど。きっと、恵太も優香の事が好きなんだよ』
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