33

 三人で自転車に跨がる。

 自転車を走らせながら、美子が恵太に話し掛けた。


「恵太、週末車出せる?」


「親父に聞いてみないとわかんないな。俺、まだ車買ってないし。琴美何人くらいになるって?」


「LINEしたら、十五人だって。真砂美は家族で行くから、あと十一人。琴美の彼氏は普通車だから、あと三人は大丈夫だって。だから、あと二台くらい出せればいいかなって」


「そっか」


「恵太のお父さんの車が借りれないなら、私のパパの車借りようか?運転は恵太に頼めるかな?」


「いいけど。いつもの千葉のオートキャンプ場だろう?」


「うん」


「俺達三人と、あと二人乗れるな。洋子と恵乗せるか。今日あいつらもスポーツクラブに来るはずだから、車のこと話してみるよ」


 恵太と美子は、琴美から矢吹君のことを聞いていないみたいだ。よかった。内緒にしてくれてる。


「ま、待って……」


「どうしたんだよ?」


「えっと、恵太んちの普通車、大人六人は無理でしょう。もう一台いるよね」


「そうだけど」


「……どの車に誰が乗るかとか、早くから決めなくていいんじゃない?いつものように当日にジャンケンで決めようよ」


「ジャンケン?まあ、それでもいいけど」


 美子が私の顔をチラチラ見ている。

 恵太に、矢吹君が一緒に来ることはまだ言えない。


 ◇


 ―ワンダフルスポーツクラブ―


 恵太は二階のジムに向かい、私と美子はプールの更衣室に向かう。矢吹君が恵太に話さないように【キャンプのことは、恵太に内緒にしてね。当日、みんなを驚かせたいの。】と、慌ててメールした。


「優香?なんか変だよ。どうかしたの?」


 美子にだけは、嘘はつけない。


 更衣室に入り、水着に着替えながら、美子に矢吹君もキャンプに参加することを伝えた。


「えー……!?矢吹君がどうして理科部のキャンプに同行するのよ」


「……電話で一緒に行きたいって、言われたんだ」


「よく琴美が許可してくれたね。彼氏や旦那さんしか許可しないのに。もしかして、優香……?」


 流石だな。

 美子には、何も言わなくてももうわかったみたい。




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