31
『友達とどんな話していたの?』
「……毎年、理科部の仲間とキャンプするの。みんなもうすぐ就職だし、来週の土日にキャンプに行こうって」
『キャンプか、いいね。俺も行きたいな』
「……えっ?」
『ダメかな?』
矢吹君は同じ高校じゃない。
でも、去年、幹事の京野琴美は、彼氏と一緒に参加した。
十八歳で結婚した
【結婚しても、家族が出来ても、毎年逢おう】これが元理科部の合言葉。
だから、マルメゾンワールド高校の卒業生でなくても、参加は可能だ。
矢吹君の参加に反対するものは、ただ一人。恵太……。
でも、幹事の琴美の許可があれば、不可能ではない。
「ダメじゃないと思うけど……。幹事には知らせないと……。本当に行きたい?恵太や美子も一緒だよ」
『行きたい。俺の知らない上原のこと、たくさん聞きたいし』
「……だったら、幹事に聞いてみるね。ダメだったらごめん。またメールする」
『わかった』
「矢吹君、他に何か話があったんじゃないの?」
『上原におやすみが言いたかっただけだよ。おやすみ』
「……お、おやすみなさい」
電話を切ると、胸がキューンと音を鳴らす。
私に『おやすみが言いたかっただけ』だなんて……。
枕を抱き締め、思わずニヤケる。
「きゃは、そんなぁ」
『お前、何やってんの?』
「……っ、い、いつの間に部屋に入ったの!?いつから、そこにいたのよ!?」
『ずっといたけど。真っ赤な顔して、グニャグニャ体くねらせて、大鍋で茹でられている蛸みたいだな。新種のダンスか?』
「蛸で悪かったわね。人の電話を盗み聞きするなんて、サイテー」
キュンキュンしていたハートが、かめなしさんの一言でぶち壊しだ。
『まさか……お前……浮気してるのか?』
「さっきから、お前お前って煩い。浮気って、意味わかんないし」
『人間なのに浮気の意味がわかんないのか?浮気とは恋人がいながら、他の異性に心や体を許すことだ』
猫のくせに、イヤな感じ。
「恋人いないから、浮気にならないし」
『うわ、俺という恋人がいながら、よく言うよ。毎日キスやハグをする相手は、恋人だろう。それとも、俺はキスフレか』
完全に勘違いしている。
それは、ペットだからだ。
大体、キスフレってなに。
友達にキスを許すなんて、論外だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます