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 ――その夜、高校の同級生から電話があった。元理科部の部長で幹事の京野琴美きょうのことみだ。


『優香、久しぶり!急なんだけど、来週の土日、理科部の仲間と恒例のキャンプに行こうって話になったんだ。みんな就職だし、もうみんなが揃うこともないかもだしね』


 みんな就職か……。

 私はまだ就活だけど。


「そうだね。行こう!行こう!」


『行き先は去年と同じオートキャンプ場になると思うけど、詳細はまたメールするね。美子と中原君に、日にちだけ伝えといて』


「オーケー!楽しみにしてるね」


 友達の電話を切り、すぐに美子に連絡した。


『来週なら大丈夫だよ。四月になったら、研修が始まるから行けないけど』


 研修か……。

 いまだに就活をしている私とは違う人種みたい。


『それより、優香、今日の話だけど。矢吹君と本当に付き合うの?』


「……付き合うって、友達だよ」


『あれは、私と恵太の手前そう言っただけでしょう。もしも矢吹君に付き合って欲しいって言われたらどうするの?』


「ナイナイ、絶対にナイから。それより恵太なんだけど。今日は電話したくないんだ。美子が電話してくれない?」


『え?私?私だってイヤだよ。今日の恵太は好きじゃない』


「そんなこと言わないで。お願い美子。あっ、キャッチホンだ。またね、バイバイ」


『ゆ、優香ってば……』


 キャッチホンの呼び出し音が鳴り、美子との電話を切る。電話の相手は矢吹君だった。


『やっと出てくれた。こんばんは』


「……こんばんは」


『誰かと電話中だった?』


「……うん。高校の友達と」


『そっか、上原は友達がたくさんいていいね』


 矢吹君、カフェのこと気を悪くしてないのかな。


「今日は……友達がごめんね」


『中原のこと?気にしてないよ』


 本当かな……。


『中原は上原のことが心配なんだね。俺、信用されるように頑張る』


「……えっ?」


『あの2人、上原の大切な幼なじみなんだろう。だったら、俺も仲良くしたいし』


 矢吹君の言葉に、鼓動がトクンと跳ねた。




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