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「ごめん。中原君を怒らせてしまったみたいだね。実は俺、海外生活が長くて、東京に殆ど友達いないんだ。この間、上原から高校時代の話を聞いて、君たちが羨ましくなってさ。俺も仲間に入れて欲しいなって思ったんだよ」
「優香と二人きりじゃなく、俺達と仲良くしたいってか?下心見え見えだな」
矢吹君は私を見つめニコッと笑う。
「もちろん、上原のことは特別だけど。みんなと仲良くしたい」
私のことは特別!?
美子が矢吹君に問いかける。
「矢吹君は誰にでもそんなこと言ってるの?海外のことは知らないけど、日本で『特別』とか、簡単に言わない方がいいよ。チャラチャラしてるようにしか聞こえないから」
「違うよ。この間のこと誤解させたならごめん。彼は俺の従弟なんだ」
あのチャラ男が従弟なんだ。
全然、似てなかったな。
「優香はどうしたいの?」
「私は……。えっと……。友達なら別に構わないけど……」
「そう。優香がそうしたいならいいよ。あっ、いけない。私、そろそろ帰らないと。優香はどうする?」
「わ、私も……一緒に帰る。矢吹君、またね」
「うん」
美子と恵太が先に席を立つ。後を追うように立ち上がると、矢吹君が私の手首を掴んだ。
「また電話する。今度は出てくれるよね」
「……うん。さようなら」
美子や恵太に見られていないか、ヒヤヒヤしながら慌ててカフェを飛び出した。
「何だよアイツ、感じ悪い。俺はあんな奴と友達だなんて、絶対ムリ。美子、『この間のこと誤解させたならごめん』って、何なんだよ」
「恵太に話すほどのことじゃないよ。それより、恵太はどうしてそんなにイライラしてるの?私達のこといつも『干物コンビ』ってからかうくせに、優香に彼氏が出来たなら、干物コンビも卒業だよ。友達なら喜ぶべきじゃないの?」
「優香は、一生干物でいればいいんだ」
「……っ、意味がわかんない」
恵太のイライラが移ったみたいに、美子までイライラしている。私のせいで、ニ人が喧嘩するなんて……。
「二人とも、ごめん。矢吹君、きっと寂しいんだよ。矢吹君と私は友達だから、心配しないで」
矢吹君は私にとって……
特別な……友達だから。
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