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「上原さんはたくさん友達がいるんだね。学生の時から水泳やってたの?」
「全然、私、運動神経ゼロだから。唯一得意なことは水泳なんだ」
「そうなんだ。クロールさまになってたよ」
うわ、わ、しっかり見られてた。
競泳用の水着姿も見たんだ。
みんなはスタイル抜群だけど、私は自信がない。バストも小さいし痩せている。
「そ、そうかな。矢吹君は?」
「俺はずっとバスケやってたけど。途中で辞めたから、体がなまっちゃって。それでここに」
「バスケやってたんだ。だから背が高いんだね。私は高校の時、理科部だったんだよ」
「理科部?何それ?何すんの?」
「運動部は苦手だったから、文化部だったの。理科部は結構楽しかったな。園芸の世話とか、動物や生物の世話とか。いわゆる生き物係。顧問の先生が、野外活動が好きでね、二ヶ月に一回山行ったり、キャンプに行ったりしてたんだ。だから今だにアウトドアは好き」
矢吹君が前髪を掻き上げながら、私を見つめた。
「理科部っていうから、インドア派かと思ってたけど、意外だな。キャンプなんて、行ったことないな」
「嘘、矢吹君こそ、アウトドア派かと思った」
「俺の両親は厳しくて、友達との楽しい思い出はない。野外は危険が多いしね」
「危険?」
「俺も上原さんと山行ったり、キャンプ行ったりしてみたいな。ムリだよね」
向けられた視線に……
ドキッとした。
どう答えたらいいのか、わからない。
「優香、帰るぞ!」
恵太に大声で呼ばれ、思わず振り返る。
「友達が呼んでるよ。今度いつ来るの?週何回?」
「えっと……。週二。次は金曜日」
「金曜日か。携帯電話の番号教えて?」
「……あっ、うん」
矢吹君と携帯番号を交換し、みんなの元に戻る。
「じゃあな」
「……さよなら」
私の手には矢吹君に貰ったオレンジジュース。恵や洋子がジッとそのジュースを見ている。
「それ、二本目だよね。優香、矢吹君と知り合いだったんだ。それ、早く言ってよ。知らない振りして、感じ悪い。キャーキャー騒いでた私のこと、馬鹿にしてたんでしょう」
「まさか……。昨日原宿で、ちょっと逢っただけだよ。ねっ、美子」
「だったら、どうして美子も呼ばないの?どうして優香だけなのよ。美子の方が優香より断然美人だし、お子ちゃまの優香を呼ぶなんておかしいでしょう」
お子ちゃまで悪かったわね。
どうせ、私は童顔で幼児体型ですよ。
「……そんなこと言われても、私にだってよくわかんないし」
ま、まじで……
こわっ……。
「洋子、矢吹君の方から優香に声を掛けたのよ。だから、優香にあたらないで。優香、帰るよ。恵太も、何ブスッとしてるの?帰るよ」
美子に助けられ、私は女の嫉妬から解き放たれた。
矢吹君は昨日の印象とは、異なっていた。初めて話をしたけど、ずっと前から友達だったみたいに話しやすかった。
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