19
―ワンダフルスポーツクラブ―
いつもこの時間は空いているのに、一階のロビーがやけに混雑している。
どうしたんだろう。
不思議がっていると、前列に並んでいた女子が振り返る。
「優香、おはよう。ニューフェースだよ。知ってた?」
友人の
「えっ?ニューフェース?知らないよ。男子?女子?」
「勿論、男子に決まってんじゃん。さっき
「なんだ。それでこの騒ぎ?くだらないな」
「何言ってんの。超、カッコイイんだってば」
「本当なの?いつも新しい人が入るたびに、噂になるけど、期待外れだったりするでしょう」
「今回は、あの洋子が太鼓判押すだけあって、間違いなし」
洋子は面食いで、学生の頃から男に関してはかなり煩い。実際、イケメンには目がない。
後ろにいた恵太が、私達の会話に聞き耳を立てる。
「くだらねーな。優香、自販機で珈琲飲もうぜ。俺が奢ってやっから」
「自販機?珈琲はいらない」
「いいから」
列から弾き出された私。
渋々、恵太に従う。
自販機の前に立っていたら、背後で「キャー」と、黄色い声がした。
思わず、振り向くと……
男子と目が合った。
どこかで……
見たような……。
トクンと鼓動が跳ねる。
彼がこちらに近付いてくる。
「自販機、ここにあったんだ。女子が凄くて、入会手続きも落ち着かない。ジムは二階だよね?更衣室とかシャワールームも二階なのかな」
ふんわりとした黒髪が……
入口から吹き込む春風に靡いた。
黒目がちな大きな瞳が、私を見つめている。
「俺、
彼はぶっきらぼうに名乗ると、自販機にコインを投入し、スポーツ飲料のボタンを押した。
――あの目……
――昨日の原宿の……!?
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