16
「愛を深めたい?本気で言ってるの?」
『そうだよ』
「どうしてもキスして欲しいなら、ママにしてもらえばいいでしょう。パパも頼めばしてくれるよ」
『うわっ、パパはナイだろう。酒と煙草にまみれたキスは勘弁だ。それに、俺は男に興味ないから。
あーあ、俺の唯一の楽しみだったのにな。俺とのキスを拒否るなんて、あり得ねーよ』
「勝手に楽しみにしないで。猫に戻ったらしてあげる」
『だから、猫だってば。一回で我慢する。一回だけならいいだろう』
「一回だけ?」
『うん、一回だけ』
かめなしさんに顔を近づける。
クンクンと匂いを嗅ぐと、確かにかめなしさんの匂いがする。いつも使ってる猫ちゃんシャンプーの匂いだ。
『そんなに焦らすなよ』
かめなしさんが両手を広げ私に抱き着こうとした。私は瞬時に身を交わす。
「やっぱり無理。ファーストキスは……好きな人としたいから」
『もう何度もしてるだろう。優香のファーストキスの相手は俺だ』
「ち、違うわ。アレは猫とキスしたのよ。ファーストキスじゃない」
ファーストキスが猫だなんて最悪だ。
プイッと背を向け、リビングのドアノブを掴む。
背中越しに、かめなしさんの声がした。
『優香……』
やだ、まだ言ってる。
『俺は本気だ。初めて逢った時からずっと好きだった。俺のファーストキスは優香だ。優香のこと、誰よりも愛してる。俺達は両想いだと思っていた。でも違ったようだな』
当たり前でしょう。
なに……言ってるのよ。
猫と人間の間に恋愛は成立しない。
『でも俺は諦めない。神が優香に俺の真の姿を見せてくれたんだ。俺は必ず優香の愛を取り戻す』
「……はっ?真の……姿?」
『俺に、夢中にさせてやるよ』
彼はいきなり私の腕を掴み、体を引き寄せ……
少しざらついた舌で……
私の唇を奪った。
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