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背中に感じる彼の視線、私はその視線が気になって仕方がなかったが、振り向くことは出来なかった。
「壁に背を凭れていた男子、イケメンだったね」
「壁に?見てないよ。優香はチャラ男が好きなの?どうかしてる。類は友を呼ぶっていうでしょう。街でナンパするなんて、外見がイケメンでも、中身は一緒だよ」
「……そうだよね」
朝から不思議な体験をし、私の正常な思考回路もショートしたままらしい。
ナンパ男にドキドキするなんて、美子の言うとおり、どうかしてる。
――結局、靴擦れが出来るほど長時間原宿の街をウロウロしたが、美子は恵太に誕生日プレゼントは買わなかった。
「やっぱり、誕生日プレゼントも告白もしない。三人の関係を大切にしたいから」
「美子は本当に臆病なんだから。それじゃ、恋の女神が微笑まないよ」
「それ言う?彼氏がいない優香に言われたくないよ。私達、恋の女神と相性が悪いみたいだね。二十二歳にもなって、まだ彼氏がいないんだから。うふふ」
「美人過ぎて、恋の女神が嫉妬してるんだよ」
「そういうことにしておこう」
クスクス笑う美子。
彼氏がいなくても余裕だ。
美子は美人だし、中高大と複数の男子から告白されたことは知っている。
美子がその気になれば、すぐに彼氏なんて出来るのに、美子は恵太への想いが断ち切れず、全部断っているんだよね。
いじらしいというか……
ちょっぴり切ないというか……。
勿体ないというか……。
鈍感な恵太は、美子の気持ちにいまだに気付かず、私達を『恋の女神から見放された干物コンビ』だと、勝手に決めつけているんだ。
私がスルメで美子はタコらしいが、そういう恵太だって、いまだに彼女はいないし、干物に喩えるなら恵太はクサヤだね。
二人で渋谷に移動し、いつものカラオケ店『pK』に行き、日頃のストレスを発散し、お気に入りのショップで洋服を買って帰宅した。
母がカンパしてくれたお金は、ランチとバーゲンセールの洋服に化けた。
「優香、また明日ね。バイバイ」
「うん、バイバイ」
同じ街に住む私達。
美子の家は我が家から二軒先、五軒先が恵太の家だ。
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