13

 ――その時……

 私達の背後でチャラい声がした。


「ねぇ、カノジョたち何してんの?」


「えっ?」


 見ればわかるでしょう。

 ショッピングに決まってる。


「君達二人?偶然だね。俺らも二人なんだ。一緒に遊ばない?」


 一人は見るからにチャラ男。茶髪にピアス、鋭い眼差し。趣味の悪い派手な赤いシャツ。ダボダボの腰パンには、ジャラジャラとチェーンがぶら下がっている。


 もう一人は離れた場所で、壁にもたれて携帯電話を操作している。高長身で服装はラフ、黒いTシャツにジーンズだが、妙にサマになっている。


 ふんわりとした黒髪は少し長め、毛先が肩につき、黒目がちな大きな瞳は憂いを帯び、目鼻立ちは整っている。


 その雰囲気に、一瞬にして目を奪われた。


 わっ……顔をあげた。


 カッコイイ……かも。


 初対面なのに、トクントクンと鼓動が速まった。


「あっ、カレのこと気に入った?あいつ、カッコイイだろ。超人気者なんだよ。ねっ、一緒に飲みに行かない?」


 美子が目で『イヤだ』と、合図した。


「ごめんなさい。私達、彼氏と待ち合わせしてるんだ」


「なんだよ。彼氏がいんの?仕方ねぇな。じゃあまたね」


 チャラ男はあっさりと引き上げ、壁にもたれていた彼の元へ歩いて行き、何やら耳打ちをした。


 私と美子はもちろん彼氏なんていないし。待ち合わせの予定もなかったけれど、ナンパに付いていくような年齢でもない。


「行こうよ、優香。私、ああいうタイプ苦手なんだ」


「……うん」


 ――その時、彼がこちらに視線を向けた。


 一瞬、重なった視線。

 彼は驚いたように目を見開き、私を見た。


 やっぱり……カッコイイかも。

 久々に場外満塁ホームランって感じ。

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