11
美子は彼の頬を両手で包み、チュッチュッとキスをしている。彼は黙ってそれを受け入れている。
あのおとなしい美子が、な、なんと大胆な。
ていうか、恥ずかしくて見ていられない。
『美子のキスは優しいね。唇も柔らかくて気持ちいい。もう一度、キスして欲しいな』
「わ、わ、美子!だめだよ!離れて!」
美子と彼を引き離し睨みつける。
『こわっ……。美子からキスしてきたんだよ。俺からしたわけじゃないし』
「美子に『もう一度、キスして欲しいな』って言ってましたよね?」
『何だ、妬いているのか?社交辞令だよ。優香のキスが一番だよ。わかってるくせに』
彼は私に唇を突き出す。
「うわわ、寄るな触るな、喋るな」
バタバタと両手をバタつかせ抵抗していると、背後からトントンと肩を叩かれた。
「……優香、朝寝坊してたんでしょう。寝癖ついてるし、変な夢見たの?やだな、かめちゃんが怯えてるよ」
「美子、私は寝ぼけてなんかいない。彼は確かにイケメンだけど、変態なんだよ」
「は?彼?変態?かめちゃんは猫だけど」
「だから騙されないで。日本語ペラペラ話してるし。エッチなことばかり言ってるんだから。猫じゃなくて、獣族だよ」
「獣族?ニャーしか言ってないけど。かめちゃんの夢見たの?かめちゃんが人間になった夢見たんだ。超イケメンだったんでしょう。いいな、私も人間になったかめちゃん見てみたい」
ま、じ、で?
彼の本性を知らない美子は、彼にギューッと抱き着いた。
『美子はDカップだな。優香、完全に負けてるね。俺は優香くらいの掌に収まるサイズが好きだけとさ』
「……っ、掌サイズで悪かったわね。ど変態!」
思わず怒鳴った私。
美子がポカンと口を開け、私を見つめた。
どうやら……
これはテレビ番組のドッキリではなさそうだ。
母にも美子にも、彼は猫に見えるらしい。
彼がエロい俺様男子に見え、彼と話が出来るのは、幸か不幸か私だけのようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます