9
『寝るなら、俺も……』
彼はモゾモゾと布団に潜り込み、私を両手で抱き締める。彼と目が合い、思わず悲鳴を上げた。
「きゃあー!変なことしたら、セクハラで訴えるからね!」
もしも警察に駆け込んだとしても、こんな事、誰も信じないよね。
飼い猫が人間の姿となり、日本語を話しているなんて。正気の沙汰ではない。
夢なら早く覚めて欲しい。
お、ね、が、い!
「とにかく、あなたはベッドから降りて下さい。今後、このベッドに上がることは認めません。不満があるなら、家から出て行ってくれてもかまわないわ」
『そんなこと言うなよ。ベッドはふかふかだし、優香の体も柔らかくてぷにぷにだし、俺、好きだよ。とくにそのオッパイ、あまり大きくないけど、弾力と張りはある。枕にするには最適だよね』
「……っ。まくら……」
彼の言葉に思わず赤面する。
彼は私の胸に擦り寄った。
猫ならば許容範囲だけど、彼は人と同じだ。私の胸に顔を埋めるなんて、そんなハレンチなこと、絶対に許さないんだから。
「私に指一本触れたら、訴えるからね」
『何言ってんの?これ愛情表現だから、優香は俺のこといつも可愛いって、言ってくれるのに。どうしたんだよ』
「そ……それは、猫だったから……」
『今も猫だよ』
「今は猫じゃないでしょう」
『猫だよ。にゃお~』
彼はペロッと、私の頬を舐めた。
少しざらついた舌、その感触は確かに猫のかめなしさんだ。
何度もペロペロされて、擽ったくて首を竦める。
彼は本当にあのかめなしさんなの?
私の……かめなしさんなの?
「ひいいー……っ!いつまで舐めてるのよ」
『くくっ、体が疼いて我慢出来ない?我慢しなくていいよ。俺が満たしてあげる』
彼は私の首筋に鼻を近づけて、クンクンと臭いを嗅いでいる。外見は人間だが習性は猫のままだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます