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「待って……。冷静になりましょう。あなたは人間で、これはテレビ番組の撮影で猫の振りをしている。そーよね?でも、諦めて。私はそんなのには騙されないから。面白いリアクションなんて、ムリ」
『それ、本気で言ってるのか?俺はカメナシだ。人間じゃない。獣族だ』
「け……獣族!?あー……わけわかんない。私がおかしくなったの?」
『それはこっちのセリフだ。どうして優香にだけ俺の話が聞こえてるんだよ?さっき階段から落ちたからか……?』
「そんなの、私にわかるわけないでしょう。それに、あなたは二足歩行で人間の体をしてる。全身に毛も生えてないし、どう見ても猫なんかじゃない」
『えー……!?俺、人に見えるのか?何て素晴らしいんだ!ブラボー!ついに、戻ったんだ!』
「冗談でしょう。とにかく、この家から出て行って」
『それは困る。今さら野良猫に戻りたくない。ここは三食昼寝付き、温かいベッドと、あったかい家族と愛する恋人がいる。ここは俺のホームだ。出て行かないよ』
「それ、本気で言ってるの?もう一度だけ聞くわ。あなたの名前は?歳は?」
『俺の名前はカメナシナイト。猫年齢は二歳、人間でいうなら、二十三歳くらいかな。大丈夫、今は発情してないから』
「……っ、は、発情!?」
最悪だ……。
彼はペットの『
でもどう見ても人間にしか見えないのに。
「あなたが猫だというなら、耳を見せなさいよ」
ピコンッと音がして、彼のサラサラヘアから猫耳が突き出した。よく出来た猫耳だ。まるで、本物みたい。
彼の猫耳を思い切り引っ張る。
『フギャ、いててて。何すんだよ』
どうやら、テーマパークで売られている猫耳付きのカチューシャではなさそうだ。
こ、これ、本物!?
『尻尾も見る?』
彼はカチャカチャとズボンのベルトを外す。
「きゃあー……。もういいから、お尻出さないで!変態!」
『尻尾だよ。いつも猫じゃらしみたいって、優香も触ってるだろう。変なの』
「いつもは猫だけど、今は猫じゃないでしょ!」
――尻尾もあるって、ことは……!?
「ほ、本当にかめなしさんなの?どうして、人間みたいなの?」
『わかんないよ。元に戻りたいって、ずっと思っていたから、神様が願いを叶えてくれたのかな?優香と……色んなことが出来るように』
全身にゾワッと鳥肌が立つ。
毛を抜かれた鶏みたいだ。
これは夢。
悪夢に違いない。
そもそも『元に戻った』とか意味わかんない。
飼い猫が猫耳妖怪に変わっただけだ。
こんな時は、二度寝に限る。
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