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「よくやるよ」
それ、いつもかめなしさんが使ってる食器だよ。
『何、驚いてんの?何を出されても残さず食べるのが、ペットの礼儀だ。優香みたいに、食べ物を粗末にしない』
「必死過ぎて可哀想になる。仕事選べないの?」
『何のこと?俺に話し掛けてんの?どうせ、聞こえてないくせに。
えっ……?もしかして……?優香、俺の話が聞こえてるのか?』
彼は一瞬ビクッとして、後ずさりした。
「ねぇ……ママ」
「何よ?」
「もうくだらないことやめてよ」
「くだらないこと?優香、どうしたの?今朝のあなたは変よ」
母はかめなしさんに近付き、額と額をくっつけて、「ねぇかめちゃーん、今朝の優香は変でちゅねぇ」と、赤ちゃん言葉で彼をハグをした。
『そうですね。いつもなら膝枕してくれるのに。今日の優香はどうしたんだろう。ママはいつもサイコーです。あとで膝枕して下さいね』
「……っ」
キ、キモい。
母がイケメン男子と額と額をくっつけて、ハグしている。唇と唇が今にも触れそうだ。いくらテレビとはいえ、やり過ぎだよ。
もう付き合っていられない。
イチゴジャムをたっぷり塗ったトーストを掴み、私は二階に駆け上がる。
「もう優香ったら、お行儀が悪い!」
お行儀が悪いのは、彼の方でしょう。
テレビとはいえ、器をペロペロ舐めていたんだから。
私が部屋を出ると、彼が後ろからゆっくりと付いてきた。
い……嫌な感じ。
家の中でストーカーされてる気分。
「付いて来ないでよ。私、また寝るんだから」
私の言葉を無視し、彼は部屋まで入ってきた。
ベッドに横になると、図々しくベッドの上にピョンと飛び乗った。
「きゃあー!変態!痴漢!ベッドに上がらないで!まだ撮影してるの?やだ、この部屋にも隠しカメラが……!?どこに仕掛けたのよう」
『隠しカメラ?一体何のこと?ていうか、変態、痴漢って、言い過ぎじゃない?俺達、いつも同じベッドで寝ているし、今さら恥ずかしがらなくても。優香のことなら、何だって知ってるし、スリーサイズもだいたいわかる』
「い、いつも同じベッド……!?スリーサイズ!?私が、あ、あなたと……!?」
『えっ!?やっぱり、俺の話が聞こえてるのか!?』
私と彼は顔を見合わせ、同時に「『ぎゃあー!』」と、悲鳴を上げた。
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