【1】飼い猫が人間に見える? 摩訶不思議。
優香side
3
――二千十七年、三月―
チュー ブチュッ ペロペロ……
「んふっう……やだぁ、かめなしさんそこはダメだってばぁ……」
毎朝、私は彼のキョーレツなキスで目覚める。彼の名前は『
凛とした立ち姿。キリッとした涼しい目元、頭部の茶色い毛と白い胸元、なかなかのイケメンだ。
かめなしさんは早朝、こっそり私の部屋に忍び込み、ベッドに飛び乗り布団に潜り込む。
少しざらついた舌が唇を舐め回し、そのうち甘噛みに変わっていくのだけれど。
それはそれで……
くせになるほど、心地いい。
愛があれば、何をされても許せちゃうから不思議だ。
かめなしさんを抱き締め、二人でイチャイチャする。そんな甘い時間をぶち壊すのは、階下から響く母の大声。
「優香。いつまで寝てるの。早く起きなさーい!」
休みの日くらい、心ゆくまで眠らせてよ。今しかゆっくり出来ないんだから。
「さっさと起きて、さっさと食べてくれないと、片付かないでしょう」
母の声は、まるで壊れた拡声機のようだ。鼓膜がはり裂けそうなくらい煩い。
重い体を起こし、寝ぼけ眼でベッドから下りる。かめなしさんは私よりも先にベッドを降り、部屋のドアを開け階段の踊り場に
なんて素敵なんだろう。
まるで、お姫様になった気分。
跪くかめなしさんは、私だけの王子様。
階段に差し掛かった時、私の不注意でかめなしさんの尻尾を踏んづけてしまった。かめなしさんは「フギャ」と悲鳴を上げ、爪を立て勢いよく飛び上がる。
私は飛び上がったかめなしさんを避けようと、思わずジャンプした。
――ここが、階段の踊り場だということを、完全に忘れて……。
まるで、走り高跳びの選手のような綺麗なフォームで、私は階段から転げ落ちた。
「ぎゃああー……」
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