―二千十五年、羽田空港―


「きゃあー!タカ!セガ!」


「ナイト!ナギ!こっち向いて-!」


 黄色い歓声が、ロビーに響く。

 ロビーを埋め尽くす人の群れは、バンド『異世界ファンタジー』のファンだ。


 彼らはファンにも関係者にも素顔を見せたことはない。なぜなら、それぞれがハロウィンのような派手な衣装で、素顔がわからないほどのメイクを施しているからだ。


 彼らのプロフィールは公表されてはいない。『アメリカを拠点にしている』とか、『ヨーロッパを拠点にしている』とか、様々な諸説はあるが、どれも確証はなく謎に包まれている。


 昨年、彗星の如く現れ、瞬く間にトップミュージシャンに上り詰めた。


 ボーカルのTAKAは金髪のウェアウルフ(狼男)。ギターのNAITOは猫耳と尻尾をつけた猫。ドラムのSEGAは、鋭い目をしたヴァンパイア。キーボードのNAGIは愛くるしい妖精エルフ


 四人とも個性はバラバラで、性別も年齢も非公開だが、明らかにNAGI以外は青年であると思われた。


 空港のロビーに立つ四人は、メイクのまま笑顔で出迎えたファンに手を振った。


 ――これからも、トップミュージシャンであり続けると思っていた『異世ファン』が、帰国から僅か数日後、『突然活動休止』を発表し、忽然と芸能界から姿を消した。


 ――その後、四人の消息は……

未だにわからない。

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