第3話 純白の少女
模音「こいつが…リゾネーター…!」
司令のアイパッドで見たとおり、全身が夜に溶けてみえるぐらいの真っ黒で、顔にあたる部分に二つの小さな赤い点、目が付いていた。
リゾネーター「ウォォォォォォォォォォ!!!!」
模音「うっ…」
耳を塞いでもつんざくほどの咆哮を上げる。まるで戦闘開始の合図をするかのように。
模音「アルテミス…もしかしてリゾネーターを探知して追いかけてたの?」
その疑問に応えるようにアルテミスはうなずいた。
模音「じゃあ、ここであいつを倒して一石二鳥だね。」
リゾネーター「オォアァ!!!」
このリゾネーターはゴリラのように四足歩行だ。巨大な腕でアルテミスを殴ろうと飛び掛かってくる。
模音「避けて!アルテミス!」
それを言うとアルテミスは余裕を持って攻撃をかわした!やるじゃない!
模音「次はこっちの番!!攻撃して!って言われなくても戦うか…」
アルテミスは手元に武器を出現させると、武器を剣の形状に変えて接近戦を仕掛けた。
ガキン!!ガンッ!!
模音「やっぱり、一筋縄じゃいかないよね…」
すると、リゾネーターが隙を突いたのか巨大な左腕で剣を弾いて腹の空いたところに強烈な右ストレートを決めた!
ズドォーーン!!
アルテミスは近くの石の壁に打ち付けられ、動きが鈍っていた。剣を杖代わりによろよろと体勢を整えた瞬間、リゾネーターがもう一度ストレートを決めようとするがアルテミスは武器で防いだ。が……
パキィン!!!
模音「武器が折れたぁ!?」
武器が折れ、流石の事態に驚いたのかアルテミスは固まっている。その間に今度は左ストレートを顔面にお見舞いさせられる…
模音「アルテミス!!ねぇ、これパワーアップとかそういうの無いの!?」
ポーン…
ガントレットから通知が届いたような音がした。見ると「出力を上げますか?」という言葉の下に「YES」と「NO」の文字が書いてある。何だかよく分からないけどYES!!
ガントレット『アルテミスの出力を最大にします。』
バチバチバチ……
模音「え?何?」
バッシャァァン!!!
凄まじい青い光を纏って、黄色い目がより強烈に光っているアルテミスがそこにいた。
模音「何か分からないけどすごーい!」
バシン!!
さっきのリゾネーターにやられたのが嘘のようにスピードもパワーも上がっていた。猛烈なスピードでリゾネーターを蹴り飛ばした後、折れた剣を構えて何かを始める。
ガントレット『フォトンスラッシュが使用可能になりました。』
模音「フォトンスラッシュ!?必殺技!?」
ギュィィィィン……ピキン!!
折れた剣の刃部分を補うかのように青いエネルギーの刃がリーチを伸ばしている。
リゾネーター「グォォォォォォ!!!」
模音「フォトン……スラァァァァシュッ!!!」
ジャキン!!!
リゾネーター「グ………ギャァァ……」
体を一直線に斬られたリゾネーターはうめき声を上げ、地面にドロドロに溶けていった。
模音「勝った…やった!私達初めてだけど勝ったんだね!」
私はアルテミスに抱き付こうとしたが、出力倍で触れたら怖いのでやめといた。
模音「疲れたね。明日は休日だからゆっくり休もうね。」
アルテミスをガントレットに仕舞い、アパートに戻った。
ー翌日ー
模音「ふぁ~あ…今何時かな…」
布団の横に置いてあったスマホを取り上げ、時間を確認した。今の時間は9時17分だ。
模音「結構寝ちゃうかと思ったけど、大してそこまで寝てないね。」
これからどうしようか迷う…そうだ!玉には新宿の中心に行って見てみよう!何かあるかもしれないし。
ー新宿中心ー
模音「うわぁ、結構人いっぱいだな…」
やっぱり休日だけというだけか人だかりでいっぱいだった。都市の中心にある人工湖に行き、人だかりから逃れた。
模音「ここって結構最近に出来たところなんだよね。」
丸い人工湖を都市が囲んでいるのを見たのは初めて。
模音「んっ?ちょっと待って…あの子もしかして…?」
私は少し遠くにいた麦わら帽子に白いワンピースのようなものを着た少女を見て思った。あれはもしかして…今人気急上昇中のアイドル「アリア・ゴドウィン」ちゃんでは!?そうとなら近付くしかないでしょ!!
模音「あのー…すみません…アリア・ゴドウィンちゃんですか?」
アリア「ええ、私がアリア・ゴドウィンよ。」
アリアちゃんは麦わら帽子を脱ぎ、私の瞳をまじまじと見た。何だろう…冷たいような目をしてるのに優しく吸い込まれるこの感覚……
アリア「あなた、他の人とは違う目をしている。私には分かる…」
模音「えっ?」
初めて会った人にいきなりタメ口で話すってことは私は結構特別ってこと?何かそれはそれで嬉しいかも!
アリア「詳しい話はあそこのカフェで話しましょ。」
アリアちゃんは近くのカフェの店を指差し、私を移動させた。何かおいしい店も探していたからちょうどいい。
模音「このカフェには良く行くの?」
アリア「最近来たばっかりだけど、最近に行った店の中じゃここがいいの。」
ーカフェ店内ー
中の席は満席だったので外の席に座ることになった。私はメニュー表を手に取り、飲み物とスイーツを見た。いつものようにパフェを頼むのも悪くはないけど、食べたことのないアフォガートも気になるな~
模音「アリアちゃんはもう決まってるの?」
アリア「私はいつも同じコーヒーとアップルパイしか頼まないから。」
この言動からするにコーヒーとかの知識については相当ありそうだ。なんせ見るからに「カフェ常連です」感がハンパじゃない。
模音「ここはちょっと気分を変えてアフォガートにでもするか…」
私がそう口にした途端、アリアちゃんは真っ先に店員を呼び止めた。
店員「ご注文はお決まりですか?」
アリア「私はエーデルワイスとアップルパイ1切れで。」
模音「私はカフェオレと、このアフォガートで。」
店員「かしこまりました。」
ー数分後ー
店員「エーデルワイスとカフェオレでございます。」
カチャ…
私とアリアちゃんの前にコーヒーのカップが置かれた。アリアちゃんはものも言わずにコーヒーの香りを楽しんでいる。
模音「エーデル…ワイスって聞いたことがないなぁ…」
アリア「エーデルワイス…和訳すると「高貴なる白」って意味になるわね。私の感じに合ってると思うし、味も好きだから私はこのコーヒーをいつも飲んでるのよ。」
確かに、高貴というよりかは純白の髪色をアリアちゃんにはどことなくこのコーヒーが合っている気はする…
模音「ねぇ、アリアちゃんが今まで行った店でどこが一番良かった?できたら教えて!」
アリア「私が今まで行った場所なら……確か「シュフ」ってところだったわね。そこのマスターが優しくて、私がエーデルワイス好きだってこと見抜いたのよ。」
模音「そこのマスターは凄くいい人なんだね。」
ちょっとした話をしただけなのに私もアリアちゃんも何故か笑みがこぼれてくる。
店員「アフォガートとアップルパイです。」
そうこうしてる内に美味しそうなスイーツが運ばれて来た。アフォガート食べたことないから楽しみ♪
模音「うん!アフォガート初めてだけど食べて正解だね!アリアちゃんはいつもアップルパイ?」
アリア「ええ。人になって初めて食べた食べ物がアップルパイ。特にシナモンのかかったやつが好きよ。」
今回食べているアップルパイもシナモンがかかっているやつだった。………って今「人になって」って言ったよね?
模音「アリアちゃん…聞いちゃ悪いかもしれないけど…」
アリア「どうしたの?」
模音「今、「人になって」って言ったよね?それってどういうこと?」
聞いちゃ悪いってのは分かってる…でもこの疑問を押さえられずにはいられなかった…
アリア「いいわ。あなたにだけ話してあげる。だけど、明日になったら教えてあげる。今日と同じ場所にいるから。」
模音「明日も時間は空いてるから、絶対来るね!」
そう約束を交わして私もアリアちゃんも黙々とスイーツを食べて、家に帰った…明日になれば彼女の秘密を私だけが知ることになる…
続く
次回予告
アリアの正体が明かされる…!
模音「それ…どういうこと…?」
謎の女性に狙われる!?
アリア「どうして…私を狙うの?」
模音「そこまで言うなら…あなたとも戦います。」
次回 「狙う都市」
用語解説
・リゾネーター
1949年の前後の日本に1度出現した未知の生命体。その際にはたった1日で存在は消え、幻となったが、近年2018年から今度は形を成して出現、手始めに東京を襲撃した。「悪魔(リゾネーター)」の意味合いでその名が付けられた。体の構造については今だ多くの謎があるが、1つだけ分かっているのが、大きなダメージを受けて消滅する際に、溶かした鉄のように溶けて無くなるという点のみである。このことからリゾネーターは水滴のように分解されて散らばって、出現する際に集まって体を形成していくという考えが有効である。リゾネーターには現在三種類に格付けされており、種類は以下の通り。
・α(アルファ)体…三種類の中で最も強く、狡猾な頭脳を持つとされている個体。細身の人間のような体つきをしており、単純に単体の戦闘力も高いが、ピンチになると雄叫びを上げ、無数のβ体またはγ体を呼び出し、自分はその場から逃走するなど知識も高いようである。実質、リーダー的存在のこの個体を倒さない限り、β体とγ体は無限に湧くと思っていい。
・β(ベータ)体…模音とアルテミスが最初に戦った相手はこの個体。ほぼゴリラのような四足歩行で、太い両腕が武器。知能は低く、ただ一方的に攻撃するという知能ぐらいしかないが、発達した後ろ足からはその大きさに似合わぬ瞬発力を持つ。ことあるごとに雄叫びを上げる習性がある。知能が低いためか、仲間割れもよく起きやすい。
・γ(ガンマ)体…半魚人のような姿をした個体。常に空中を漂っており、地面を泳ぐようにして敵に即座に近付くなどスピードもあるようだ。β体と比べると1体の戦闘力は低いが、知能はそれなりにあるため、仲間とコミュニケーションをとって不意打ちなどを食らわせる戦法が得意。
また、新しく新種が生まれる危険性もあるため、政府は新たなホープミュードの開発を急がせている。いずれにせよ、リゾネーターは我々にとっての壁となる。
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