第2話 悪魔殺し

模音「私が…戦う…?」

司令「そういうことで、君にこれを託す。」

司令は懐から携帯機のようなものを取り出し、私に差し出した。一見するとおもちゃにも思える。横には大まかなスイッチのようなものが付いており、携帯機の上側には円形の多分横のスイッチを押した時に開くものが付いていた。

司令「この中には人類の希望と最先端が詰まっている。どう使うかは君次第。試しに出して見るといい。」

模音「試しに出すって…どういうことですか?」

司令「言い忘れてた。この携帯機の名はガントレット。横の大きなスイッチを押してごらんなさい。」

私は震える親指で横の黒いスイッチを押してみた…

カシャン!!シュゥゥゥゥン……

模音「うわっ!」

上側に付いていた円形のものが開き、その中心から粒子が飛び出て瞬く間に青いロボットの姿を形作った。

司令「驚いただろう?この機体の名はアルテミス。全てにおいてバランスの取れた機体なんだ。そして我々が政府から特別な措置を受けとり、このロボット…すなわちホープミュードの生産に取り組んでるのだ。」

模音「凄い…でも何か…かっこいい…!」

今私の目の前にいるのは正しくアニメや映画で見るロボットそのものだった。小さい男の子ならすぐにでも飛び付くであろう見た目だった。

司令「ホープミュードはオートで戦闘を行う。リゾネーターが近くにいればすぐさまそちらへと向かい、戦闘を行う。でもちゃんと君が命令をすればその声を受け取って動かすことも出来る。そしてホープミュードは普段はガントレットに粒子レベルで内臓されている。好きな時に呼べばいい。」

模音「へ~…そんな使い方があるんですね!」

司令「ホープミュードは一貫して利用者の感情も読み取れる機能も備わっている。最初は扱いづらいとは思うが、そのうち慣れてくるだろう。さて…そろそろ君が加わる部隊が来るはずなんだが…」

部隊?何か凄く強面の人達が来るの!?え、私大丈夫かなぁ…

ポーン……

司令「おお、来た来た。」

エレベーターの所に振り返ると高等部の生徒男女二人が出てきた。よかった~強面の人達じゃなくて…

少女「司令、お呼びでしょうか。」

司令「ああ、実は今日から中等部の生徒が君たち第8部隊に加入することになった。この施設内のことなどについて案内してくれ。」

少女「分かりました。」

司令「では私はこれで。おっと、言い忘れるとこだった。くれぐれも我々のことは他の生徒には秘密にしておいてくれ。」

模音「分かりました!」

ますます秘密基地感が出てるじゃん!そりゃもちろん秘密にするでしょ!

模音「あ、えーと…お二人方は…」

節奈「私は紅斬節奈。この第8部隊のリーダーよ。」

紅斬先輩は何故か険しい目付きで私を見ている…何でだろう?

勝太「俺は福山勝太!!後輩が来てくれて嬉しいぜ!よろしくな!で、あんたの名は?」

模音「桐山模音と言います…あの…よろしくお願いします。」

左の福山先輩は優しい目で右の紅斬先輩とは対照的だった。

節奈「1つだけ言っておく…ここでは泣き言なんて許されない…分かった?」

模音「え……」

会ってまだ数秒しか経ってないのにいきなり重いこと言われた……

勝太「おいおい紅斬、まだ初対面の後輩にそんなこと言うなよ。」

節奈「いい?これは戦いよ。遊びじゃないの。遊びで来てるなら今すぐにでもあなたのことを取り消しにしてもらう。」

勝太「言い過ぎだ!紅斬!!」

普通なら暖かく迎えてくれるはずなのに、まるで自分から最初の印象を悪くさせているようにも見える。もしかして過去に何かあったのだろうか?

勝太「ごめんな。あいつ昔っからあんな感じでいるから…あいつの代わりに俺が謝っておくよ。」

模音「いえ…そんなに気を使わなくても…」

話が一旦落ち着いたところでエレベーターのある場所から左に歩き始めた。廊下のようで右側には休憩室のような部屋がいくつもあった。

模音「お二人は昔から知り合いなんですか?」

さっきの昔っからという言葉が気になり、質問してみた。

勝太「俺と紅斬は小学校の時から知り合いでさ。俺は愛知の田舎から来たもんで都会の空気に慣れなくって、最初は苦労したよ。さっき言った通りあいつの小学校の時もムスっとしたまんまだったさ…さぁ、着いた。」

私達はエレベーターのある場所から結構奥の部屋に足を止めた。近くに自販機がある。

勝太「ここが俺達の第8部隊待機室。ここで休憩したり、指令を待つことが出来る。」

紅斬先輩は相変わらず険しい目付きのままでいた。私にはどうもその目が気になって仕方ない。

勝太「そうだ。まだガントレットの機能について教えてもらってないことがあるだろう。」

模音「まだ機能があるんですか?」

勝太「司令…ガントレットの機能が多すぎて玉にいくつか忘れてること多いからさ…」

模音「はは…」

校長とかでもそんなことあるんだ…

勝太「ホープミュードの出撃方法とかは教えてもらったと思うから、後は仲間との通信機能とか…」

紅斬「私はまだ桐山を仲間だとは認めてない。」

勝太「まだそんなこと言うのか!そろそろぶっ飛ばすぞ!」

そんなガタイの良い腕でやられたら相当なものだろうなぁ……

模音「あっ、あの!喧嘩はやめて下さい……」

勝太「ごめん、気を悪くさせてしまったな…」

ちょっと待って…何か私も忘れてるような…

模音「あの、あそこに置いてある機体…あれ私のなんですけど……」

そういえばアルテミスガントレットに入れるの忘れてた…

勝太「出撃させる時のボタンをもう一度押せばどこからでも戻ってくる。中々便利だろ?」

シュゥゥゥゥン……カシャン。

アルテミスの体が粒子レベルになり、ガントレットの中に入ると同時に上側の円形が出撃前の形状に戻る。 

勝太「後は色々俺が教えるから。」

模音「ありがとうございます!」


ー放課後ー


勝太「お前、これからどうすんだ。後輩に第一印象悪くして。」

紅斬「私には第一印象なんて関係ない。これから桐山が私達の部隊でどうするかも彼女次第だから。」

ドンッ!!

勝太はおもいっきり拳を壁に叩いた。

勝太「お前なぁ…少しは温もりっていうものが無いのかよ!!前に来た子だってそうだった!!お前のせいで前の子はソルジャーをやめてしまった…少しはリーダーとしての責任ってものが無いのか!?」

紅斬「そんなこと、とっくに過ぎた話じゃない。今は今で関係ない話よ。あなたも少しは「冷静になる」ってことを覚えたら?」

勝太「ふざけんな……こんなチームワークで部隊がやってけるか…!」


ーその夜ー


模音「凄い!これ家事全般も出来るの?便利すぎない!?」

私は福山先輩から教えてもらったことをガントレットで見ていた。どうやらホープミュードは家事全般も綺麗にこなすことも出来るっぽい。特に料理に関しては今現在あるほぼ全ての料理が出来るらしい。後、戦闘時の呼び掛けは「オープンガントレット、バトル・スタート」だそうだ。

カシャン!!シュゥゥゥゥン……

模音「よし!じゃあアルテミス、お風呂沸かしてきて!」

そう言うと、部屋の風呂場に向かっていき、ピッピッと沸かすボタンを押してきた。もはや人間と同じ動作である。今までの「ロボットらしい」という動きは全くない。


ー寝る前ー


模音「お休みぃ~アルテミス…」

お休みという言葉を受けてアルテミスはこくんとうなずいた。何だか可愛い。

シュゥゥゥゥン…カシャン。

私はガントレットにアルテミスを入れ、眠りについた…


ー夜中ー


カシャン…

模音「う~ん……?」

ガチャ…

私は窓の鍵を開ける音で目が覚めた。何故かアルテミスが勝手にガントレットから出てベランダから外に飛び出し、そのまま走っていってしまった!

模音「ちょっと!勝手に出て行かないでよ!」

私もすかさず追いかけた。そしてやっとアルテミスが止まった路地のところで見てしまった…リゾネーターという黒き悪魔の存在を…

模音「こいつが…リゾネーター…!」

続く。


次回予告

ついにリゾネーターとの初戦闘!!

模音「危ない!避けて!」

そして動き出す、謎の少女…

アリア「あなた…他の人とは違う目をしている…私には分かる。」

模音「私が…?」

次回 「純白の少女」




用語解説

・ホープミュード

人類の希望と最先端をテーマに作られた対リゾネーター専用兵器。一機の全長はおおよそ190㎝という高身長の大人並だが、ロボットだけということもあってはるかに高いスペックを持つ。見た目はそれぞれだが、作者曰く「イメージ的には変形しないマクロス」らしい。勝太のホープミュードのように変形機構を有する機体も徐々に開発されている模様。また、高度な電子頭脳を入れて人の言葉を理解し、人語を話す機体も制作中のようだ。基本的にはガントレットに粒子レベルで分解され、格納されているが、出撃時には即座に元の機体に戻す修復の早さもある。ただし、大きなダメージを受けるとすぐに再起不能に陥るのが弱点である。その際には基地で約20時間におよぶメンテナンス(一度変身解除したウルトラマンがまた変身するのに必要な時間とほぼ同じ時間)が必要である。

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