(拓馬・はるな編)

メッセージ11 遠距離を繋ぐ風

【 拓馬のメール 】


 昨晩の余韻も覚めやらぬ今日気分はすがすがしい。

僕が住んでいる故郷からはるなさんの住むあの街までの遠い距離感はもう感じない。

早速彼女にメールを入れてみた。


〈はるなさんへ・・・昨日は突然お会い致しましてすみませんでした。でもとても楽しい夜を過ごせました。はるなさんはあれからお元気になりましたか?また、近いうちにお会いできる日を楽しみにしています〉     


・・・・そして送信する・・・・


まずは挨拶から、なかなか気のきいた文章は書けないものだ。早くあの人からの返信が待ち遠しい。

しばらくたって彼女からのメールが届いた。


【 はるなのメール 】


 今日は気分がすっきりとしている。たしかに美奈の言葉を思い出せば、悲しくなるけど、いつまでもくよくよするのは私らしくない。それに私にはもう一人大切なお友達が出来たから今は悲しいとは思わない。

早速彼からメールが届いた。すぐに返信する・・・


〈私こそ昨日は恥ずかしい素顔を見せてしまってごめんなさい。それに拓馬君を自分勝手に姉の所まで連れまわしてしまって・・・後で姉にひどく叱られました。


最初に会ったカフェで、私が泣いていた理由も一言も聞かずに、あの時はただ優しい言葉だけかけてくれましたね。

あのカフェで拓馬君が私をずっと待っていてくれた事は、今日思えばすごく嬉しかった。

あなたに出会ったおかげで、昨日は悲しくて切なかった夜を過ごさないで済んだから。  (*_*)


拓馬君には一杯感謝しないとね、本当にありがとう。また会えたらいいね。拓馬君にお休みを合わせるのは難しいかな? 今度会う時はもっと気軽にお話ししましょう。〉    


・・・・送信完了!・・・・


さあ・・彼に借りたハンカチをきれいにして今度彼に会う時までに忘れないよう、私の自慢の笑顔と一緒に返すことにしようかな。


【 拓馬のメール 】


 月暦も変り、12月に入った。あれから幾日か過ぎた休日に、彼女の事を思い描く。

(はるなさんは元気かな?)

そろそろあなたの顔が恋しくなっていた。


僕の仕事は不定期な休日が多い。でも無理をしてでも彼女に会いたいという気持ちはいつも強く思っている。とりあえず勤務表のスケジュールをにらみながら、何とか都合をつけてでも休みを取ろうか?

そしてメールを送る・・・


〈はるなさん、お元気でしょうか。あのカフェの時のように、はるなさんの心が悲しい涙で一杯になったなら、その時は僕に少し分けてくださいね!

そうそう今月は中旬頃なら土曜か日曜と休みが取れそうなので、その時にお会いできたら嬉しく思います、良いお返事を待っています。お互いにまだよく知らない事もあるので、食事でもしながらゆっくりとお話ししませんか? それではまた。〉  


・・・・送信する・・・・


【 はるなのメール 】


今日は朝から寒い。最近の暖冬の話が聞かれるものの、木枯らしが強く木々の枝を鳴らしている。退社して帰宅途中で私の携帯が鳴った。


彼からのメールだ! 『悲しい涙で一杯になったなら、その時は僕に少し分けてください』 

ほんと彼って優しいんだね。今月の中旬はちょっと都合が悪いんだけど・・

でも彼の休日も考えて出来るだけ私も彼に合わせようと思った。そして彼にメールを返す・・・


〈拓馬君、こんにちは。今日はとても寒いね?風邪なんか引いてないかな?私は今仕事が忙しくって毎日残業続きです。

今日はたまたま定時で帰れたけど、疲れが取れないよ~

      ((´д`))

拓馬君に愚痴を言ってもしょうがないよね?ごめん!ごめん!


日曜はいとこの結婚式があって忙しいんです。でも来週の土曜なら会うこと出来ないかな? もし都合が悪いならば、別の日でも構いません。

この間友達においしいレストランを紹介してもらったの、ご一緒にどうですか?また拓馬君とゆっくりお話がしたいと思っています。それではあえる日を楽しみに。またメールをください。〉     

・・・・送信する・・・・


 なんだか少し気持ちが落ち着いたかな?彼ともう一度会えることの嬉しさか不思議と寒さも、さほど感じなくなった。彼が言ってた春風ってこんな感じなのかな?

まだよくは解らないけど、誰かと会う約束をするだけで、こんなにも温かくって前向きな気持ちになれるんだ。

普段の忙しい生活には、人の優しさなんて感じる余裕がなかったのかもしれない。


【 拓馬のメール 】


 今日も太陽が西の空に沈んでいきます。はるなさんが住むあの街にも同じ夕日がおとずれていて、彼女も見ているのだろうか?


今太陽が地平線の彼方にしずむ瞬間に、一矢の光を放ち、僕の顔を赤く照らした。

普段は気付かない当たり前の日常が、こんなにも美しくみえる事が、ささやかな幸せなのかな?と思った。はるなさんからのメールで、再び会える楽しさがを思いながら、心を躍らせて

彼女にメールを打つ・・・


〈はるなさん仕事が忙しそうですね。体を壊さないでください。僕も今のところ体調は順調です。それから愚痴は大いに結構です。僕でよかったらいつでもたくさんぶつけてくださいね。 (笑)

 

今太陽が西に沈みました。僕の住んでる街は田舎町なので、地平線の彼方まで田園が広がっています。普段から見慣れた風景ですが、今日ほど美しく見えた日はありません。

はるなさんの街もやがて夕日が落ちることでしょう。あの夕日がはるなさんと思いながら見ていると、また明日会えるんだなって、元気が沸いてくる気がします。


ごめん・・・こんな気恥ずかしい事は、メールでしか言えません・・・   "(-""-)"

あなたに会える日を今からとても楽しみにしています・・・あっ、その美味しいレストランに是非お誘いください。楽しみにしています。それではお仕事頑張ってください。〉  


・・・・送信する・・・・


もう辺りは夕闇がせまり、町の灯もポツリ、ポツリと点きはじめた。

しばらくはるなさんともお別れか。また明日彼女の明るい顔が見れることを楽しみにしよう。


【 はるなのメール 】


 今日も長い一日が終わる。でも今日も残業でまだまだ家には帰れない。そんな時に拓馬君からメールが届く 

(ちょっと休憩しようか・・・) 


 今職場の窓から見える夕日はとても綺麗。そんなロマンチックな事を友達に言ったら、

(ヒロイン気取りは、はるなには似合わない)なんてからかわれるだけね。とは言っても、私も普段からそんな事を感じる事は余りなかった。沈みかけた夕日を見ながら彼にメールを打つ・・・


〈こんにちは拓馬君。昨日は思わず愚痴なんか漏らしましたが、私の愚痴を聞いてたらきりが無いし、拓馬君を一晩中寝せないからね!(笑)  

       ヾ(≧▽≦)ノ (-_-)zzz

でもメールを打つのは余り得意ではないけど、お話しをするのは大好き!私ってお人好しなのかも?よく相談役になっちゃうんです。


そう言えば拓馬君の住んでる所って何処なのかな?地平線の彼方まで田園風景なんて素朴で素敵じゃない?

あっ!今私の街も夕日が沈んだみたい。


夕陽が私だって?そんな事冗談でも言われたことないから、照れるけどね。ちょっと嬉しいかも?

私だって拓馬君から少しずつ元気をもらってるからそれはお互い様。明日もお日様は昇ってくるから、お互いにまた元気をもらいましょうね。


土曜日は予定通り空けておきます。場所と時間は拓馬君の都合のよい時間に合わせますので、決まったら連絡下さい。私も会えるときを楽しみに待ってます。〉 


・・・・そして送信する・・・・


気が付けば外は薄暗くなっていた。仕事の疲れも彼からのメッセージをもらったおかげで少し元気が出てきた。

(もうちょっと頑張ろう!) 

そう自分に気合を入れながら、今の仕事を乗り切っていこうと思った。今日沈んだ太陽もまた明日のぼり、新しい希望の一日が始まる事を願って。






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