(はるな編)
メッセージ9 親友の苦悩
会社の昼休み久々に親友の美奈と会った。どこかやつれて、疲れたような彼女。
私は昨日美奈の彼からの、電話でのメッセージを伝えようと声をかけた。
「みーちゃん。実は昨日、あなたの彼から大切な話があるから必ず連絡がほしいって電話があったの・・」
美奈は少し驚いた様子で私を見た。
「えっ!彼がどうしてはるちゃんに電話なんかしたの?」
「誤解しないで!あなたのことをすごく心配していて、それで親友の私に伝えてほしいって」
美奈は少し笑顔を見せて答えた。
「はるちゃん!お昼これからだよね?久々に食べに行こうか?彼の話聞かせて」
私は会社近くのレストランで、彼からの電話での話を全部話した。いつもはおしゃべりな美奈も怖いくらいにじっと黙ったまま私の話を聞いている。
話しをすべて伝え終わってからも、美奈は口を開こうとしない。そして沈黙の後美奈が話しはじめた。
「そうか・・・彼、名古屋に行くんだ!」
「出世したんだね、彼なりに夢が叶ってよかったじゃん!」
「みーちゃん・・・」
そう言って私は何も言えなかった。
「はるちゃんあたしね、自分のやりたい事って本当は何だろう?そう思い始めたの・・」
元気よく見せようとしている彼女の顔に、蔭りが見えた気がした。私はそんな美奈の顔を見ていられなくなりつい本音を言ってみた。
「彼あなたと暮らしたいって、みーちゃんの夢だってきっと応援してくれるよ。だからもう一度彼とよく話し合ったら?」
「そうかな?彼、今頃どうしてはるちゃんに相談なんかしたのかな・・・」
美奈は強く言った。
「あたしが本当に苦しいときなんか、話も聞いてくれなかったくせに・・・」
私は美奈の言葉に困惑しながらも穏やかに仲立ちをしようとした。
「あなたになかなか連絡がつかなかったって。」
「あたしだってここ何ヶ月か、精神的に辛かったの!あたしなりにどうやってこれから生きていこうかって、ものすごく考えていたんだよ!」
美奈はうつむいて話を続ける
「彼に相談したかったけど、彼も自分の夢に頑張っていたし、忙しい彼の邪魔をしたくなかった。」
美奈・・・そんなに辛く悩んでいたなんて。普段から明るく振舞っているあなたからはとても悩んでいることすら感じなかったのに。
「みーちゃん、私には相談できなかったの?」
わたしは彼女の辛い現実を受け止め切れなかった悲しさを尋ねた。
「はるちゃん。あたしにはあなたが羨ましかった。」
「えっ!わたしが。」
「あたしは、親友だからよくわかるんだけど、はるちゃんって、いつもまわりの人に優しいでしょ。あたしはいつもはるちゃんには甘えすぎちゃってるし、今の弱い自分を見てると、その優しさが怖いくらい自分が情けなくなってくるの・・・」
美奈は更に下をむく。
「そんなことない!みーちゃんは弱くなんかないよ!あなたはいつも太陽のように明るくて、逆に私のほうが励まされることもあるんだよ!」
私は強く訴える。
「違うよ・・・ふだんのあたしはただ強がってるだけ!ほんとうは情けないほど意気地無しなんだよ!」
そして顔をあげた目には涙をためていた美奈が肩を震わせて叫んだ。
「臆病で自分の将来にもおびえてる泣き虫なのよ!もう、夢も追い続ける事なんて出来ないし・・あたし、どうしていいか分からないの!!」
美奈は両手で顔を覆った。
「今はるちゃんと一緒にいるとダメなんだよ、あたしが壊れそうになるの・・・」
その言葉に私は呆然とした。
「そんな・・・」
「彼があなたに相談したことも今わかったよ。彼の立場ならあたしもおんなじ事してたよね。はるちゃんこそみんなの太陽なんだよ・・・」
「あたしなんかちっぽけな雑草みたいなもの・・・」
私は親友のそんな言葉に悲しくなった。
「みーちゃん。なんでそんな事言うの・・」
あっという間にお昼休みが過ぎていく。でも私の中では時間が永遠に止まっているように感じた。
「あっ!もうお昼おわりだね・・・ご飯食べれなくてごめんね?」
美奈は涙を拭い、笑顔で答えた。
「はるちゃん愚痴ばかり言ってごめん・・・いろいろあたしの事心配してくれてありがとう。」
外に出て美奈の表情に蔭はなく穏やかであった。
「はるちゃんみたいな親友はどこ探したって見つからない!いつまでもあたしのかけがえのない大切な友達だよ・・・。」
私は最後に彼女に言った。
「みーちゃん!彼に連絡してあげて。ずっと待ってると思うから・・・」
美奈はうつむいて静かに話をした。
「あたしも彼とたくさん話すことがあるから、今夜会って話をしてみるよ。」
こうして私は美奈と別れた。その後会社では彼女に会って話しをする機会はなく、冬の季節が瞬く間に過ぎていく。
彼女もまた私から遠く離れていってしまうのだろうか?。
午後からも私の気持ちはすっきりとしない。重く気分も落ち着かない。早く会社から帰る時間を待ち望んだ。
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