(はるな編)
メッセージ8 親友の彼
親友の彼からの突然の電話が来た。友人の美奈とその彼はあるサークルで知り合って恋に落ち、今日まで私が羨むほど、仲睦まじいカップルだったはずだ。
「もしもし!美奈の事で相談したいんだけど、ちょっといいかな?」
そんな美奈の彼から悲痛の叫びが始まった。
「俺も最近仕事が忙しくて、あいつとはなかなか会えなくて悪いと思っている。美奈から俺の事何か聞いてないかな?」
(本当に彼と会ってないんだ・・・)
先日カフェで不満をぶつけていた彼女の事を思い出した。
「いいえ?あなた、それより美奈から大切な相談事を聞いてないの?」
「相談?あいつ最近何も話そうとしてないし、こっちが電話やメールしても返事が返って来ないんだ!」
(えっ!以前は彼の自慢話しかしなかったのに、みーちゃんどうしたんだろう?)
カフェで悩んでいた話を、彼にぶつけてみた。
「美奈、とても悩んでいるみたいよ。会ってまじめに話しを聞いてあげてるの?」
「勿論、俺もあいつとはよく話しをしたいと思ってるよ!あいつ、もしかしたら俺を嫌いになってるんじゃないかと思って・・・」
「それは違うよ!美奈はあなたの事を自慢するくらい好きで、とっても愛してると思うの。何よりも、あなた達は今までも長く仲良くつきあっていたじゃない?」
彼は少し沈黙する
「・・・・・・・それはよく分かってる、俺も美奈を愛してるし、仕事だってあいつの為に頑張って来れたんだ!でも最近すれ違いばかりで・・・・お互いの気持ちがどこか離れてしまってるんじゃないかと思ったら、すごく怖いんだよ!」
「実は俺やっと仕事が軌道に乗ってね、来年の3月に名古屋で営業所を任せられることになったんだ。」
その言葉に私は困惑した。
「えっ!名古屋に行くって?美奈にその事は話したの?」
「いや・・・まだ・・・あいつ何て言うかな?・・・」
「そんな大事な事、私なんかより美奈に真っ先に言わないと駄目じゃない!」
彼に叱咤すると黙り込んでしまう。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ねえ!聞いてるの!」
私が強く話しかけると、彼は小声で話す。
「ああ・・・本音を言えば美奈に一緒に来て俺と暮らしてほしいと思ってる。でも多分あいつは断るだろうな・・・」
「そんな事ないよ!」
私が否定すると、彼がポツリと言った。
「もうあいつは自分の夢を追い続け始めたから・・・」
「その事で美奈は傷ついてるよ!ずいぶんひどい事言ったんじゃない?」
彼は反省したように言った。
「あいつの夢を馬鹿にしていた訳じゃない!ただ俺の傍にいてほしかった。それでついあいつが傷つく事言ってしまったんだ」
「俺だってあいつの夢を叶えてあげたい。でも、俺がいたらあいつは今、自分の夢を諦めそうな気がして・・・」
「馬鹿!!」
私は思わず暴言をもらす。
「あなたは美奈の本当の気持ちをわかってないよ!みーちゃんはあなたと一緒に夢を追い続けたいのよ、たとえ一人では叶わない夢でも、二人一緒なら叶う夢もあるんだよ!」
再び彼が沈黙する。
「・・・・・・・・・・ そうかも知れない・・・・でも今の俺じゃ何もしてやれない・・・」
私はそれ以上話す事が辛くなっていた。美奈と彼の溝がこんなに深く離れていたなんて。
「もう一度美奈と話しがしたい。あいつにあったら大事な話があるって伝えてほしい。もう頼めるのは、美奈の親友である君しかいないから・・・・」
「あっ!急にこんな話ししてごめんな、君に話ができてよかった。今仕事中だからもう切るよ!」
その後彼から二度と電話が来ることはなかった。私は脱力感を覚え、まるで手足に重い鎖を縛られている様にしばらく動く事が出来なかった。
今すぐ親友にメールを打とうか?少し迷いが出た。
「私どうしたらいいの・・・」
ため息まじりの言葉が漏れた。親友がこんなに悩んでいるのに、どうすることも出来ないなんて。
(明日みーちゃんに会おう。メールや電話じゃ駄目!会ってちゃんと話しをしなくちゃ・・・・)
そう思いながらもどんよりとした灰色の雨雲が私の心に少しずつ広がっていた。
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