(拓馬編)
メッセージ7 春風の息吹
どこからか頭の中に声が聞こえた
「はるちゃん!・・・はるちゃん!・・・とても苦しい!・・・寒いよ・・・・・・・・・」
「はるちゃん助けて!!」
僕はその叫び声に、はっとして飛び起きた!
(夢?夢なのか!)
周りを見渡したが、そこは紛れも無く僕の部屋である。
今何時だろうかと時計を見た。朝の5時過ぎで、まだ外は暗い時刻だ。
(なんだろう?今の夢は・・・)
(はるちゃん!あの人の名前?誰かあの人を呼んでいる声だろうか?)
少しずつ頭の中がはっきりしてくるが、僕の心臓はまだどきどきと鼓動している。
あの人の素顔、声、そして忘れもしない印象的な笑顔、再会した時の記憶はもう僕の心にはっきりと刻まれていた。何よりも嬉しかった事は、あのカフェであの人の友人が呼んでいた名前をはっきりと記憶していた事である。
(はるちゃん・・・貴女の名前はなんと言うのだろうか?はるこさん?はるみさん?いや!反対の、みはるさんかも知れないな・・・)
色々と想像を膨らませば心が躍る。
『このお店私達の憩いの場所なの、仕事帰りによく来るんです』 あの時の彼女の言葉を思い出した。
あのお洒落なカフェに行けば、素敵なはるさんに会えるんだ!そう思えば今までの不安や、迷いはすべて吹き飛んだ。
不覚にも自分の名前を教えてしまった事も、今となれば後悔にはならない。むしろお互いにほんの少しだけ知り合ったことになるから。
もしはるさんに会う事が出来たなら、今度こそは勇気を持って話そう。
(はるさん・・・あなたとお友達になって、もっとあなたを知りたい。)
もし断られても嫌われてもいい、今の素直な自分の気持ちをあの人に伝えよう。
あのカフェであなたをいつまでも待ち続けよう。
今の僕の心には冬枯れの寒い風は吹いていない。あなたの名前のような春の風が吹き始めたから。
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