(はるな編)
メッセージ1 秋風の悪戯
私は最近引っ越しをして一人暮らしを始めた。小さい頃から慣れ親しんだこの街が、何よりも大好きだった。
新しく住み始める場所に、贅沢な生活は望まないけど、住みやすい環境は自分なりにこだわりを持ちたい。そのこだわりの条件とは、(緑がたくさんある公園が近くにあって。涼しげな川のせせらぎの音が聞こえてくるような、癒しの空間がある場所。ちょっと贅沢な事を言えば駅から近い事かな?)
そんな生活を満喫出来る、私だけのお城を見つけてもう1ヶ月が経った。今日は新居で使う日用品を探して街を歩いた。
もうこれで4軒目。お気に入りのカーテンとステンドランプがなかなか見つからない・・・もう足はがくがく、気分も少しブルーになっていた。
(疲れたよ~・・・いつものカフェで休もうかな?)
そう思いカフェのある近道の路地を曲がろうとした時、突然の突風が私の体を押し戻した。
(何よ!この風!こんなに疲れているのにどうして邪魔をするの!)
憤りのない怒りを覚える。
(私・・疲れてるんだ、もう家に帰ろう・・
引越しの荷物の整理もまだ済んでないし)
北風が冷たく吹き抜けるなか、私は家路を急ぐ。
“シティギャラリー” の前で、ある芸術家の個展の展示ポスターが目に入った。その中の一枚のパステル風のイラストに見入り、ふと足を止める。
(そうそうこんな可愛いデザインのカーテンがあったらいいのにな)
そう思いながら私は再び歩き始める。
その時冷たいはずの風がなぜか温もりを感じ、優しく撫でるように私の頬を吹き抜ける。
(何だろう?まるで春の陽だまりの様な暖かい気分・・・)
私は立ち止まり辺りを見回した。
そこには、人々の波が忙しく行き交うだけの見慣れた休日があるだけだった。
さっきまで重く、落ち込んでいた気分がいつのまにかすっきりと晴れていた。
(ちょっと元気が出たみたい。お気に入りのカーテンはまた気長に探そうかな)
少し足元が軽く感じた私は、落ち葉の舞い散る街をゆっくりと家路に帰った。
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