酸カリ!! ~❤どちらが溶かすか中和するか❤~

かぼつ

第1話 空前絶後の、、、、

この春から高校生になる彼は、今までの人生を自分で作ったマニュアルノートにしたためていた。

  ・2歳の時、母親が他界。

  ・4歳の時、父親が再婚。

  ・7歳の時、母親(2)が浮気。離婚。

  ・小学校低学年、父親が借金。貧乏のためいじめを受ける。

  (給食費 どうせお前がとったんだろ事件)

  ・10歳の時、父親再婚。

  ・そのころテレビを失う。

  ・12歳の時、母親(3)が不倫。その後離婚。

  ・悟りを開く

  ・14歳の時、マニュアルブックを完成させる。


ふぅ、とため息をつく。気づくと、無意識に涙が出ていた。


         ~40日後~


 日は大きく西に動き、心地よい風が吹くこの放課後に、俺はわざわざ屋上にいる。しかも、今日は唐揚げ屋のバイトなのに。時間は4時25分。きちっとした5分前行動は、社会の常識である。

 それよりも、まずは今日のこの事件について考えてみよう。

 まず、朝学校に着いて下駄箱を開けると、中に手紙が入っていた。

(今日の放課後の4時30分、放課後に来てください、待ってます。)

 丸くて癖のある女の子の字だった。

 世間の高校生は 高校生=呼び出し=告白。または、呼び出し×青春=告白。

と考えてしまいそうになるが、12歳で悟りを開き精神年齢40歳のこの俺はそうは簡単に考えない。

 まず、学年の怖い人が誰かを男子を使って、てへへドッキリでした❤というパターン。この場合は、確実に避けるべきだが、逃げると逆に目をつけられる可能性があるので、きちんと屋上に行くべきだと判断される。

 次に、告白のパターン。この場合、ガチで告白されるケースと罰ゲームで告白されケースがあり、どちらにせよ行かないと変な噂がでる可能性があるので、きちんと屋上に行くべきだと判断される。

 最後、普通に適当に入れてやったぜ!のパターン。もてそうにないやつを狙って陰で笑うことを目的とした、、、

 ガチャっと音がする。時間は4時29分。分析の途中に依頼人が来たようだ。一応、言質のために、スマホの録音のスイッチを入れる。

「あっ、後目ごもくくん、来てくれたんだ。」

すると、依頼人女子が入ってきた。彼女は、身長はそこまで大きくなく、紙はセミロング。ぱっちりとた目が特徴的だった。うん、可愛い。やべぇ。

「うん、僕に何か用かな?」

落ち着いて、マニュアル通りに話をする。

「えっと、ね、その、私、後目君のことが気になってて、、えっと、、、好きです。付き合ってくださいっ。」

普通の告白来たぁ~。まてまて、冷静に。彼女の背後を確認。よし、誰もいない。

「えっ、僕のどこがいいの?」

「どこって、は、初めて見た時からその、、一目惚れです。」

「えっ、はっ、。」

どうしよう、どう答えよう。相手を傷つけないように、、、、、。

ふっと彼女が顔を上げた。頬は真っ赤になっている。鼻息も少し荒いように見える。しかし、目に違和感を覚えた。目が恋していない。目が真実じゃない。あれは、確か、中学2年のあいつに、、、

「一目惚れってことは、僕の外見だけで判断しただけか。」

「えっ、そんなっ、、こと。」

向こうを見ると驚いた顔をしている。だがしかし、もう遅い。

は、外見だけで人を判断するような、軽い感じの人なんだね。そういうのやめたほうがいいと思うけど。」


きわめて、冷静に、無感情で、言葉を放つ。なんてことを言うんだ君は!そう誰が言っている音がする。違う。これは、、、

「そっかぁ、ばれちゃったかあ。」

さっきまでの優しそうな顔から一気に表情が変わる。すると、通路の裏から2人の女子が出てくる。髪は金髪で、制服はかなり着崩している。

「なんで、わかったのぉー。」

「つまんなーい。てかっ、一葉の告白で落とせなかったやつ、初めてじゃね?」

笑いながら、一葉のという女の近くに集まる。何やら、ニヤニヤしながらぺちゃくちゃしゃべっている。なんだこいつら誠意を見せぇ、誠意を。

「面白いね、君。私は、2年三藤。こっちが松本、であんたに告白したのが平田。」

「いや、22連勝だったのにねぇ。」

終わったことなので、そのままバイトに行くことにする。全員集合ビッチ3兄弟を無視して出口に向かう。

「おいっ、ちょ、何無視してんの。ちょっと、モテるからって、調子に乗ってんの?」

「キモイんだけど、マジキモイ。」

言いたい放題言われたので、一言返してやる。

「その厚化粧、みんなに効果1があると思わないほうがいいよ。」

「ん、なっ、逃げんの?」

めんどくさいので、決着をつけよう。すっとスマホを出す。

「今までの、全部録音してるけど、いいの?」

なんだか久しぶりの静寂が訪れる。

はぁ、飛んだ時間の無駄だった。



ということは、言えないので、

「えっ、はっ、」

「いや、ごめん、君と付き合う気はないんだ。」

「ぷっ、何マジになってんの?ウケるんですけど。」

いや、わかってたよ。嘘だって。でも、女子の力は怖いっていうか。そのねぇ。

「いや、一年ってなんかピュアでいいね。」

「でもこれって、断られたんじゃね(笑)。」

後からビッチ3兄弟が近づいてくる。心の中では決まったのに。

久しぶりに、死にたくなっていると、すさまじい勢いでいきなり扉が開いた。


「何ですかその告白は!ちゃんと誠意を持って答えないと。」

扉から、ある女の子が飛び出してきた。この人は、、

「あなたは、告白したのでしょう?だったら、もう少しきちんとした理由で断らないと。」

「、、、、、、。」

きっきまで賑やかだったこの屋上に、沈黙が訪れる。

「おい、こいつは、、、、、。」

「マジ?」

そういうと、あの3兄弟は少し小走りで去っていった。そうすると彼女と二人きりになる。

端正な顔立ち。流れる黒髪。学年の中でも目立つ存在。

俺は、この人を知っている。

1年 橘 あきら。

無論、名前と顔を知っているだけで会話したことは無い。仕方ない、学校ではほとんど人と会話をしないんだから。

彼女は成績優秀、容姿端麗、まぁ学校内でもトップレベルの美少女である。こんな美人が俺を助けて、、、

「もう、君!特に理由も言わずに断るなんてひどいよ。」

くれてはなかった。この人は、俺に怒っているようだった。なにそれ。

「いや、あれは偽の告白で、俺は騙されたんだよ。」

身振り手振りで訴えるが、彼女には届いていないようだ。

「嘘の告白?そんなの聞いたことがありません。本当に?」

うん、と言って録音したスマホを取り出す。

「あなたは、本当に騙されたの?」

「はい。」

「そう、、、。」

ようやく分かってくれたようだ。ちなみにこの美人は、この町の中でも有名なお金持ちのお嬢さんであった。

ふう、息をつく。そろそろバイトに行かないと。

彼女の横を通って、扉に向かう。しかし、そこで思わぬ障害が立ちはだかった。

「待ちなさい。まだ、話は終わってません。」

彼女は顔を真っ赤にして言う。

「嘘であっても、それが答えをないがしろにしていい理由になりません。」

どうしよう、マニュアル通りに、、と思ったが少し腹が立ったので言い返してやろう。

「人の心を弄ぶような告白でもあなたの言う本当の告白なんですね。あーあ、見損なった。」

ニヤッとして腕を振りほどく。

「なんですって、どうしてあなたはそんなに可哀そうなのですか。あーあ、可哀そうそのあなたの小さい心が。」

ニヤッとして、また腕をつかむ。

「そうですよ、俺は小さい心ですよ。そして、あんたみたいにお金持ちじゃなくて、貧乏人ですよ。くっ、苦労もしたことがないくせに。」

「私だって、悩むんで苦労して、、、。」

「2歳の時、母親が他界。」

「えっ、。」

しょうがない俺の思いトラウマを食らわせてやる。

「7歳の時、母親が浮気。小学校の頃父親が借金。貧乏のためいじめを受け、12歳の時また、再婚した母が浮気。。。お前には、お前にはわかるのか、この苦労がぁぁ、。」

言ってやった、ああ嫌われた。俺はそのまま目を瞑って屋上から逃げ出した。





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