茨城県編1.-公園って、遊具があるとばかり思っていました-
金が無いので、茨城県ひたちなか市まで公共交通機関を使わずに行こうと思う。
道の駅、「うつのみやろまんちっく村」で、パンフレットをもらう。
茨城県には「国営ひたち海浜公園」という有名な公園がある。茨城県ひたちなか市の太平洋岸にあり、春のネモフィラ、スイセン、チューリップ、初夏にはポピーやバラ、夏のジニア、ヒマワリ、秋にはコキア、コスモス、冬のアイスチューリップなど、彩り豊な花々が四季を通じて楽しめる公園らしいのだ。
公園って、遊具があるとばかり思っていたけどそうじゃないんだね。
向かう。だが、地図を見ると、八〇キロメートル以上ある。こんな道のりを歩くなんて、某作家の物語じゃあないんだし、無理だ!
よって、ヒッチハイクをすることにする。
だけどねー、皆さん、何かしら用事があって乗っているだろうし、明らかに暇そうに見える僕を乗せてくれる訳が…… 、
「兄あんちゃん、どうした? ヒッチハイクの指をしてるから旅でもしてんのか? 乗せてってやるよ」
強面のにーちゃんが車窓から顔を出して声を掛けてきてくれた。
「ええっ!? 良いんですか? 」
「おう! 話し相手が欲しかったからよ! 」
優しい人だ。乗らせてもらう。
「何処まで行きてぇんだ? 」
「え、えっと…… 、国営ひたち海浜公園です…… 」
「は? 遠くね?」
そりゃあそうである。
「旅人でして…… でも金が無いんでヒッチハイクで行こうと思いまして…… 」
兄ちゃん、微妙な顔。
「ちっと遠すぎるかな…… 、じゃあ半分まで運んで行ってやるよ。そこでまた新しく探してくれ」
うわぁぁ、この人優しいぃぃぃ!
**
「俺は大手ボタン製造企業の取締役だ。今は有休をとっている」
彼の名字は西島にしじまというらしい。
「大手ボタン製造企業、ですか。こりゃあまたすごい人に会ったもんだ」
乗せてもらって大体二〇キロメートルくらい進んだ時であろうか。彼がこんな話をしだした。
「僕が履いているジーンズのボタンもそうですかね? 」
「ああ、多分そうだ。今は運転中だから見えんがな。樹脂とか、革とかでも作るんだぜ。自分の会社の物が使われているってーのは悪い気はしねーな。
ところでお前さんは? 何してたんだ? 旅が出来るってぐれーだから良い仕事だったんか? 」
あまり触れたくない話題になってしまった。
「あー、その、えっとですね、うーん…… 」
こんなことしか言わないので何かを察したらしく、「ごめんな、無理だったら言わなくて良い」と言ってくれた。
話題が自分の生い立ちから、最近のニュースについて等、脈絡の無い話をしつつ、半分まで来てしまった。
「じゃーな、後は頑張れ」
「ありがとうございます! 」
「恐らく運命はお前さんに非情な時もある。だが、自分のことは自分でしかコントロール出来ねぇんだ、自分で頑張れ。どうしても無理だったらここに連絡してくれれば何かしらのアドバイスはやる」
と、良い話の後、名刺を渡してくれた。世の中にはこんなにも優しい人がいるのか。
深い礼を言った後、彼は行ってしまった。
さて、ヒッチハイク再開である。
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