第2話 星の囁きβ
――あれは宇宙に数ある星の中でも「
その天体は北斗七星の柄杓の中にある。
地球から見ると「βの奇跡」は一つだが、近年、双子の惑星であることが分かった。
一つは、赤く燃ゆる「
地球から見ると半球が赤くその反対側は白い。
アズモンド博士が発見するまでは異色の惑星と呼ばれていた。
◇◇◇
――ここ、地球は日本の七夕の夜。
「私達は永遠に愛し合うことを誓います」
五年前、高校生の頃まで
「五年後に結婚しよう」
プロポーズから長い時が流れた。
やっと今、この瞬間、結婚できる。
美舞の自宅の花咲き誇るガーデンパーティーは二人にブーケを贈っていた。
そして、美舞の両親、ウルフとマリア。
この式を心を込めて手伝った親友の
皆の見守る中、粛々と進んだ。
玲は、極めて白いウエディングドレス姿の美舞の頬にふるふると手を当て、美舞は、桜の花の様にその瞼を閉じた。
美舞は、次第に紅潮する頬を隠せなかった。
玲もうっすらと瞳を潤ませる。
二人は優しく唇を合わせた。
――その刹那!
ザササササッ。
バババッシュッシュワー……。
「これは、流れ星……?」
美舞と玲の胸を巨大な光の矢が貫いた。
「あ……。胸が、流星群に何かが混じっていたよ」
美舞はよろめき、二つの胸を押さえる。
「大丈夫か? 美舞。ぐっ……。俺の胸にも白く光輝く矢が刺さったが」
この時、流星群に混じり、「βの奇跡」がある宇宙空間から、地上に二つの星が流れ落ちた。
禍々しく赤い星と清らかなる白い星。
それらが、美舞と玲がキスを交わしたその時に舞い降りたのだ。
ドッドッ……。
ドドドドドド……。
迫り来る波動が予兆するものは何であろうか。
美舞と玲は夜空を見上げる。
七月八日午前零時ジャストの空を。
――生まれ来る子に幸あれよ。
胸を貫いた光の矢が、風に誘う様に語った。
星は囁きを知っていた。
βの奇跡は、二人の子に幸をもたらすのか。
――翌年、三月十六日。
「ほんぎゃあ! ぎゃあ! ほんぎゃ……!」
「おめでとうございます!」
「おめでとうございます!」
「お母さん、赤ちゃんを連れて参りましたよ。元気な女のお子さまです」
「……。お、おお……。可愛い私の赤ちゃん」
帝王切開だったから、直ぐには抱けなかった。
けれども、隣に連れてきて貰った。
美舞は、言わないといけないことがあった。
それは、美しい、世界で一つの名前。
玲と美舞の赤ちゃんの為に。
「土方むくちゃん、生まれてきてくれて、ありがとう……」
むくに手を伸ばすが届かない。
でも、気持ちは届いた筈だと思った。
「むくちゃん……」
誰あろう、頬を濡らしたのは――。
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